マーケティング / セミナー

Posted on 2015-04-06
「広告ビジネス最新動向-広告手法の変化と実際」その1. メディア環境変化と新たな広告プランニング手法



[Text&Photo 蓬田修一]
日本印刷技術協会(JAGAT)は2015年(平成27年)3月24日、同協会アネックスにおいて、プリンティング・マーケティング研究会/クロスメディア研究会共催ミーティング「広告ビジネス最新動向-広告手法の変化と実際」を開催しました。
 
ミーティングの前半は、スケールアウト 取締役CMO 菅原健一氏が「メディア環境変化と新たな広告プランニング手法」をテーマにプレゼンテーションしました。後半は、データマーケターの内野明彦氏が「顧客価値の最大化を図るデータ分析」というテーマで、ビッグデータを活用したカスタマージャーニー分析について解説しました。

ここでは両氏のプレゼンテーションについて、その内容をお伝えします。まず、スケールアウト菅原健一氏のプレゼンからご紹介しましょう。データマーケター内野明彦氏のプレゼンにつきましては、4月20日頃に掲載予定です。

メディア環境変化と新たな広告プランニング手法

スケールアウト 取締役CMO 菅原健一氏

アドテクノロジーがインターネット広告の成長を牽引

先ごろ発表された日本の広告費は6兆円を超え、回復傾向が見られる。広告費の内訳を見てみると、テレビが若干回復傾向にあるものの、新聞雑誌ラジオは減少傾向または横ばいである。

成長しているのはインターネット広告だ。スマートフォン市場の成長や動画広告、新テクノロジーを活用した広告配信の浸透が下支えし、市場を伸ばした。

インターネット広告のうち、62%が運用型広告で、残り38%が枠売り(=純広)だ。

運用型広告は、検索連動広告が多くを占めるが、PC検索の伸びが落ち着きを見せる中、スマートフォンやタブレット検索が大きく伸びた。

さらに、大きく伸びた領域の1つがDSP(Demand-Side Platform)である。これはリアルタイムの入札形式で広く効率的に広告配信する手法だ。

変化するデジタルマーケティングの流れ 枠から機へ

そもそも広告とはなんだろうか。私は企業と生活者との出会いのお手伝いをするのが広告だと思っている。

デジタルマーケティングが発達する以前は、広告主はどこのメディアにどのようなクリエイティブで広告を出すかを考えればよかった。

ところが、デジタルメディアが発展するにつれ状況は変わってきている。デジタルメディアの発展によって、広告スペースは飛躍的に増えていった。現在、ウェブにおける1日の広告件数は45億件とも言われている。

そのため、商品に興味を持ってもらえる人や、買ってくれそうな人に広告を出していくためのプランニングが一層重要になってきた。

これまでのネット広告の歴史を振り返ってみると、一番初めは広告主から「あの媒体に広告を出したい」という媒体側へのアプローチがあったのであろう。それに対して媒体社が広告を掲載していった。媒体社と広告主との直接売買、つまり枠売りが行われていた。

その後、広告主はより効果の高い媒体に出稿したいと考えるようになった。同時に媒体の数が増えていき、広告主はどの媒体に出稿したらいいのかがわかりにくくなっていった。その一方で、媒体社は広告枠が余ってしまうようになった。

そこで開発されたのがアドネットワーク技術だ。これにより、効果の高い媒体に自動的に出稿できるようになった。

それは、媒体社の余った在庫を買い取る仕組みだとも言える。一方、広告主にとっては、自動的にいろいろな媒体に少しずつ出して、効果の高い媒体に出していくようにする仕組みであった。

とても良い仕組みだったのだが問題もあった。媒体社は余っていた在庫をアドネットワークに出していたので、あまり高く売らなかった。その結果、広告主にとっては純広を出すよりもパフォーマンスが良くなったので、特にアメリカではともてはやってしまって、純広が売れなくなってしまったのだ。

広告主にとっては純広よりも安いコストで効果を上げることができ、媒体社にとっては価格の高い純広が売れなくなったことで、アドネットワークの仕組みは1回崩壊しかけた。

こうした状況の中、媒体社はもう少し広告を高く買って欲しいと考えるようになり、一方で広告主は、より効果の高い媒体ではなく、効果の高い「インプレッション」に広告を出したいと考えるようになった。

これを実現させるためには、瞬間で取引を成立させないといけないのでオークションという仕組みが導入されていった。

時代的にリーマンショックの後で、金融工学者たちが失業していた時期であった。そこでアドテク業界が、金融工学者たちの力を借りて作ったのがRTV(リアルタイム)取引だ。このように広告の買い方が変化していった。

広告主の抱える課題の解決に役立つデータ基盤構築

次に、現在マーケターが抱える課題について話したい。電通によれば、現在はマーケティングニーズの細分化、およびユーザーの接触メディアの分散化を受け、ジャンルを特化した各種専門サイトの活用が拡大していると分析している。

これはフラグメンテーション、断片化が起きていると言える。現在はあらゆるものが断片化されてきたと言えるだろう。

昔は新聞やテレビなど習慣的に入ってくる情報があり、誰もが同じ情報に接している状態にあると言えた。

ところが今は、消費者はSNSなどから情報を得るようになり、その結果、得た情報はかなり偏ったものになってきた。

この変化の何が問題かと言うと、消費者の好みが偏ってきたため、商品ジャンルにおいて強い商品があるという時代はすでに終わったということにある。

こうした状況の中マーケターは、どんな人が商品を買うのか、どこに広告を出したらいいのか、どんなクリエイティブがいいのか、どのチャネルを使ったらいいのか、施策の影響や効果が読みづらくなってきた。

そこで出てきた新しい広告の買い方が、PROGRAMMATIC BUYINGというものだ。これは「人」や「機会」に応じて広告を出していこうという方法だ。

これまでは、メール、LPO(Landing Page Optimization)、検索、ディスプレイ広告などにおけるユーザーに関するデータを、それぞれ専用のデータベースで管理していた。

これからは、メール、LPO、検索、ディスプレイ広告などすべてをDMPというひとつのプラットフォームで管理していくことが考えられる。

ここで重要なことは、ユーザーがディスプレイ広告を見たとき、検索したとき、ランディングページを見たとき、メールを見たとき、それぞれの最適なタイミング(=機)で広告を出し分けることにある。

従来、広告の「枠」だけを取引していたときは、クルマを売るにはクルマの情報が載っているメディアに広告を出していた。

また、「人」だけにフォーカスしてクルマを売っていたときは、妊娠や出産など、ユーザーのライフスタイルに関するオーディエンスデータを活用していた。

「人」と「機」を重視したマーケティングにおいてクルマを売るためには、ユーザーのオーディエンスデータを活用し、サイト来訪の何日以内に資料請求をする確率が何%なので、広告予算の配分をサイト来訪何日以内のユーザーに多めに出稿し、それにメールを組み合わせていくという施策になる。

つまり、ユーザーが「欲しい」と思う時に広告を出せることが重要となった。

広告主の送り手の視点でのコミニュケーションは「新商品が出たから多くの人に知ってほしい」「値引きしてもいいから買ってもらいたい」「店舗に来ればどんなことでも応える」と言うものだった。

一方、生活者の視点で考えると「車を買い替えたくなったから情報が欲しい」「欲しいものが見つかってから値段の話をしてほしい」「FacebookやLINE、メールである程度情報が欲しい」というように、自分のタイミングで知りたいし買いたいというものだ。

広告マーケティングの今後の発展と課題

趣味嗜好が大きく断片化され、媒体も断片化された今、マーケターはどうしたらいいのだろうか。

ひとつはマーケティングオートメーションによって、ユーザーが欲しい時にオンデマンドで対応できる仕組みを活用することだ。

またクラウド技術を使い、例えばバナー広告を量産して最適化させるという方法もあるだろう。

さらに大きなプラットフォームを活用し、断片化を吸収させるという考え方もある。

今まではプロモーションの中でPDCAサイクルを回してきたが、今後は商品の企画、生産、販売、すべてにまたがるPDCAサイクル化が重要となってくるだろう。

こうなった背景には、3Dプリンターを使って短時間で製品が作れるようになったことなどがある。

また、ウィッシュリストにある程度のユーザー数が集まったたら、小ロットで生産して販売するという流れも出てきた。

今後は、テストマーケティングで売れた商品だけを広告で拡張して売っていくという流れに変わっていく可能性があるだろう。




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