マーケティング

Posted on 2016-11-05
東京ビッグサイトの東京オリンピック メディアセンター利用 展示会産業と日本経済に深刻なダメージ





オリンピック・パラリンピックのメディアセンターとして地用される予定の東京ビッグサイト


オリンピックにわくイベント業界
でも産業イベント業界には悪影響が

2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、東京の街は競技施設だけではなく、商業施設や文化施設、交通機関などが着々と準備を進めています。その一方で、開催にともなって大きな打撃を被る可能性が高い産業=展示会産業が存在し、日本経済にも悪影響を及ぼす可能性があることは、意外と知られていません。

全国の展示会場では1年間を通じて、様々な展示会が開催されています。特に有明の東京ビッグサイトは、最も活用頻度の高い施設です。その東京ビッグサイトが、東京オリンピック・パラリンピック開催にともない、オリンピックメディアセンターとして使われることになっています。そうなると、展示会産業および日本経済は大きな打撃を被る可能性があります。

2019年4月から2020年11月まで
多くの展示会が中止、縮小へ

まず、東京ビッグサイトのメディアセンター利用をめぐるこれまでの経緯を見てみます。東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まると、東京都は2015年10月、2019年4月から2020年11月までの20か月間、オリンピックメディアセンターとして、東京ビッグサイトの大部分を使用することを公式に発表しました。

東京ビッグサイトでは年間約300件の展示会が開催されています。メディアセンターとして東京ビッグサイトが活用されると、これらの展示会の大部分が中止や縮小に追い込まれることになります。

都知事、五輪担当大臣、首相に
メディアセンターの新設を陳情

これに対し、国内最大の展示会産業団体である一般社団法人日本展示会協会(日展協)は、以下の懸念を示しました。

・展示会が例年通り行われなくなることにより、展示会を主な営業活動の機会としている数多くの中小企業がビジネスチャンスを失う。

・展示会主催者やブース装飾などを手掛ける展示会支援企業が経営危機に直面することになる。

・展示会開催によって本来期待される交通、宿泊、飲食、臨時雇用などにおいて甚大な経済効果が損なわれることになる。

さらに、東京都知事、五輪担当大臣、安倍総理に対し、メディアセンターをビッグサイト以外の場所に新設してほしい旨、陳情しました。

東京ビッグサイト近隣に
2019年1年間限定で仮設展示場設置へ

その後、東京都は2016年2月に、東京ビッグサイト近隣の東京テレポート駅近くに2万4000㎡の仮設展示場を、2019年1年間限定で建設する改善策を発表しました。

日展協は「これは東京都の尽力の結果ではあるが、依然2020年4月から10月までの7か月間、東京ビッグサイト全館がメディアセンターとして使用される予定であることには変わりない。これにより約170本の展示会が同会場で開催できなくなり、概算で約1兆6000億円の出展社による売上が失われると見込まれる」との見解を示しています。

また、これら170本の展示会には、約1000社の海外企業が出展し、約10万人の海外バイヤーが買付けのために来日しています。もし展示会が開催できなくなれは、それらの海外企業や各国政府などから、日本市場への売込みや買付けの機会が失われるという苦情や批判の声が寄せられると予想されます。

さらに日展協は「もし7か月間にわたって、展示会が開催できなくなれは、約1000 社の装飾、電気、マンパワーなど展示会支援企業にもたらあされている約1760億円の売上を消滅させ、多数の展示会支援企業が倒産する恐れがある」としています。

さらに「展示会支援企業の場合、オリンピック開催によって売上がカバーされるという意見もあるが、それは主にオリンピック会期中に限定されたもので、この7か月の中止による損失は、やはり甚大であると言わざるを得ない」とコメントしています。

日本は大型展示会場が少なく
他の会場への移動も困難

開催できなくなった展示会を、東京ビッグサイト以外の展示会場に移すという方法も考えられます。しかし、国内第2位の規模を持つ幕張メッセもオリンピックの競技会場になるので展示会開催は難しい状況です。また、そもそも日本には大型の展示会場が各国に比べて極端に少なく、横浜、名古屋、大阪などの展示会場はすでに多くの展示会で埋まっているため、展示会の移動は容易ではありません。

こうした状況を踏まえ、日展協は出展社と展示会業界の声を代表して、公式声明文を発表し、「多くの展示会が開催できないことにより、依然として国内外で深刻な問題になる恐れがあるため、すべての展示会が例年通り開催できるよう、簡易な仮設展示場の建設を含め、様々な方策を行っていただきたい」と各方面に訴え、署名活動を行ってきました。2017年(平成28年)9月30日現在での署名総数は、7万3866にのぼっており、現在も増加を続けています。

リオ、ロンドンでは
オリンピックでも通年通り展示会を開催

これまで述べたように、約5万社の出展企業をはじめ、展示会支援企業、主催者など、多くの関係者は経営難や倒産など、依然として大きな危機感を抱いています。また、展示会が開催されなくなることによる経済的なダメージは甚大になると見込まれます。

2016年のリオ大会や2012年のロンドン大会でも、展示会を中止することは、すでに長年、定期的に行われている経済活動を阻害することであり、経済に与える打撃が大きいという観点から、すべての展示会は例年通り開催されました。日本でも、仮設展示場の建設などにより、例年通り展示会が開催されることが必要です。




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