アート

Posted on 2018-11-23
【レビュー】感性で鑑賞できる作品も展示 「見る、知る、感じる──現代の書」


全長約5000メートルにも及ぶ大作を前に立つ、作者の金敷駸房(かなしき・しんぼう)氏


会場は「見る書と知る書」と「感じる書」のふたつのエリアで構成
「見る、知る、感じる──現代の書」が開催中だ(会期:2018年11月18日(日)~2019年1月6日(日))。

書の世界では、古典を学び修練を積むことは今なお重視され続けている。

一方で、表現分野として書は発展し、現代的なあり方を追究した作品や、美術館の空間に合わせた大作なども展開されている。

今回の「見る、知る、感じる──現代の書」展では、“現代の書”を制作する“旬”な以下の6人の作家を紹介する(カッコ内は所属する公募団体)。

秋山和也(謙慎書道会)
大橋洋之(謙慎書道会)
金敷駸房(創玄書道会)
菊山武士(産経国際書会)
鈴木響泉(朝聞書会)
千葉蒼玄(書道芸術院)

展覧会の主催者は「古典を継承しつつ現代化に取り組む作品や、書とは何か、ということそのものを問いかける作品の鑑賞体験を通して、現代の書の世界が豊かに広がり、幅広い表現を包含していることを、見て、知って、感じてもらいたい」とコメントしている。

会場では、作家の制作風景やインタビューした映像を見ることができる。

作家のリアルな制作現場の様子や、作品に対して語る作家の言葉などを手掛かりにすることで、より深く作品を鑑賞できることだろう。

感性で鑑賞できる現代アートような作品もあり、書の初心者にも、ぜひ見てもらいたい展覧会だ。

会場は「見る書と知る書」と「感じる書」のふたつのエリアで構成されている。

現代書の歴史的背景を知る
「見る書と知る書」エリアには、金敷駸房、秋山和也、大橋洋之の作品が展示。現代の書、とりわけ近代詩文書の発生した歴史的な背景などを「知る」と同時に、かなや漢字の伝統的書法の今日的なあり方について紹介している。

金敷駸房(かなしき・しんぼう)
創玄書道会監事、毎日書道展審査会員
1973年東京都大田区生まれ、東京都葛飾区在住

村山槐多(かいた)著『槐多の歌へる』の全文を揮毫(きごう)した、全長約5000メートルにも及ぶ超大作を展示している。

書道展で多く見られる、詩集や句集を部分的に抜粋して書き、額装し作品として発表する、という形式とは全く異なる形態の書作品だ。

秋山和也(あきやま・かずや)
謙慎書道会常任理事、読売書法会理事、日展会友
1963年茨城県稲敷郡河内町生まれ、同町在住

かなの散らし方における構成の大胆さが持ち味の作家で、古典の臨書を非常に重視しており、創作中も欠かさずに臨書を日課として取り組み続けている。

作家の気力と体力の円熟期に制作され、古筆を忠実に身につけたからこそなせる大作の、折帖二帖を出品。

また、雅やかな装飾を施した全懐紙を用いた中字がなや、大字がなによる新作も出品する。

大橋洋之(おおはし・ひろゆき)
謙慎書道会常任理事、読売書法会常任理事、日展準会員
1962年山梨県甲府市生まれ、同市在住

古代文字の造形感覚に定評のある作家だが、近年のエネルギー漲る自在な線からは、波に乗っている勢いを感じさせる。

長い歴史を持ち、脈々と受け継がれてきた「漢字書」の歴史に向き合い、文字を素材とした表象芸術として今日的な感覚で取り組んでいることを、漢字の五体(篆書、隷書、草書、行書、楷書)を用いた多彩な作品で鑑賞することができる。

感性で受け止められる書作品
「感じる書」エリアには、菊山武士、千葉蒼玄、鈴木響泉の作品を紹介。

大字書(少字数書とも言われる。1~4文字程度の漢字により構成される作品)や、前衛の書(文字の形態から逸脱した造形や、刷毛や布、ラッカーやエナメルなどを用いてることもある書)など、感性で受け止められる作品を紹介する。

菊山武士(きくやま・つよし)
産経国際書会専管理事
1967 年三重県津市生まれ、同市在住

菊山の作品は、墨の色と造形感覚が独特で、軽やかさを湛えた紙面は絵画的に鑑賞することができる。

感性に委ねてぼんやりと眺めて味わうことも可能ですし、書かれている文字を読み、その意味も含めて味わうこともできる作品だ。

伝統書法の確かな技術に支えられ、紙面上で自在に舞い踊るかのような筆線が堪能できる。

千葉蒼玄(ちば・そうげん)
書道芸術院理事、毎日書道会評議員
1955年宮城県石巻市生まれ、同市在住

東日本大震災から7年を経て、被災地では復興が進む一方、風化という状況も発生している。

そうした中、書でないと実現できないことは何か、という命題に被災者でもある千葉が真正面から向き合う作品を紹介する。

また、前衛の書に対して、書かそうではないかという定義が果たして必要なのか、ということまでも考えさせられる作品も展示する。

鈴木響泉(すずき・きょうせん)
朝聞書会副理事長、毎日書道会評議員、日展会友
1956年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市在住

一貫して大字書に取り組んできた作家で、淡墨を駆使した墨色の美しさと同時に、線の多彩さに定評がある。

鈴木は筆という道具の可能性を広げ続けている。作品の紙面全体に目を向けると、余白と線の調和が生み出す空間、とりわけ紙の白色の美しさにも気付くだろう。

上野アーティストプロジェクト 2018「見る、知る、感じる──現代の書」
会期
 2018年(平成30年)11月18日(日)から2019年1月6日(日)まで
休室日 11月19日(月)、12月3日(月)、17日(月)、25日(火)、31日(月)、1月1 日(火・祝)
開室時間 9時30分~17時30分(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室 金曜日は9時30分~20時(入室は閉室の30分前まで)
会場 ギャラリーA・C
主催 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
後援 朝日新聞社、産経新聞社、毎日新聞社、読売新聞社
協力 産経国際書会、毎日書道会、読売書法会
特別協力 北井画廊
観覧料 一般500円、団体(20名以上)400円 、65歳以上300円 ※学生以下無料(要証明)

(Photo:M&C Media & Communication 蓬田修一 11月17日プレス内覧会で撮影)




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