アート

Posted on 2019-01-17
【レビュー】「イサム・ノグチと長谷川三郎-変わるものと変わらざるもの」ふたりを通して50年代を感じる


 


ニューヨーク、サンフランシスコに先駆けての開催
イサム・ノグチと長谷川三郎という稀代の芸術家の交友に焦点を当てた「イサム・ノグチと長谷川三郎―変わるものと変わらざるもの」が横浜美術館で開催中だ(会期:2019年1月12日~3月24日)。

イサム・ノグチは、日本人の父とアメリカ人の母との間に、1904年(明治37年)ロサンゼルスに生まれた。父は詩人の野口米次郎、母は作家・教師のレオニー・ギルモア。幼少期を茅ヶ崎、横浜で過ごし、1918年(大正7年)13歳で単身渡米する。

その後、ニューヨークのコロンビア大学医学部進学課程に通いながら彫刻を学び、1924年(大正13年)「イサム・ノグチ」として彫刻に専念することを決意した。1988年(昭和63年)、ニューヨークで逝去(享年84)。

長谷川三郎は1906年(明治39年)、山口県豊浦郡(現・下関市)に生まれた。東京帝国大学で美術史を専攻、卒業論文では雪舟を論じた。

卒業後、3年間パリに留学。1936年(昭和11年)から抽象作品を描き始める。戦後1947年(昭和22年)には「日本アヴァンギャルド美術家クラブ」を結成。画家としてだけでなく、理論家としても活躍した。1957年(昭和32年)、教鞭を執っていたカリフォルニアで客死(享年50)。

ふたりは1950年(昭和25年)に、東京で出会った。“古い東洋と新しい西洋”の関係に関心を抱いていたふたりは、芸術家としての関心事やビジョンが驚くほど似ていたことを知り意気投合する。

その後、固い友情で結ばれ、長谷川はノグチにとって日本の古い文化遺産(建築、庭園、書、絵画、考古遺物、茶道、禅、俳句など)への無二の案内役となって、ノグチが日本の美の本質を理解するうえで重要な役割を果たす。

一方、ノグチは対話を通して長谷川の制作意欲を奮い立たせ、長谷川が墨、拓本、木版を用いてそれまでにない創作の地平を切り開くきっかけを与えた。

今回の展覧会は、以下の6章で構成。

1. 長谷川三郎 抽象芸術のパイオニア-伝統と現代つなぐ
2. 1950年代の長谷川三郎-イサム・ノグチとの出会いを経て
3. 長谷川三郎とイサム・ノグチを結びつけるもの
4. イサム・ノグチの日本における制作活動のはじまりー1950-54年
5. 開かれた道ーアメリカでの長谷川三郎
6. 古い伝統の真の発展を目指して-1954年以降のイサム・ノグチ

1950年代に花開いた2人の芸術世界。会場には、ノグチ作品約50点、長谷川作品約70点が並ぶ。

今回の展示で重要な時代をなしている1950年代は、私たちにとって、その後の「60年代」「70年代」「80年代」などと違い、捉えにくい時代だ。

彼らが何を見て、何を考え、何を目指したのか。ふたりの歩みを通して、50年代を見つめ直すきっかけにもなるだろう。

本展開催後は、ノグチ美術館(ニューヨーク)とアジア美術館(サンフランシスコ)に巡回する。

イサム・ノグチと長谷川三郎-変わるものと変わらざるもの
会期
 2019年(平成31年)1月12日(土)から3月24日(日)まで
会場 横浜美術館
観覧料 大人1500円(1400円)、大学・高校生900円(800円)、中学生600円(500円)、小学生以下無料、65歳以上1400円
※( )内は20人以上の団体料金
※毎週土曜日は高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
※観覧当日に限り本展の観覧券で「横浜美術館コレクション展」も観覧可

(画像は1月11日に行われたプレス内覧会で撮影したものです。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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