アート

Posted on 2019-02-12
【美術展レビュー】「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」


 


伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、岩佐又兵衛、鈴木其一、狩野山雪、歌川国芳、白隠慧鶴の“奇想”を堪能
美術史家、辻惟雄(1932年(昭和7年)~)は、書籍『奇想の系譜』を1970年(昭和45年)に著した。

そこで紹介されたのは、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の6人の画家だ。

それから半世紀近く経た現在、かつては江戸時代絵画史の傍流とされてきた彼らの絵画が、人気を集めている。

今回の展覧会は「奇想の系譜」で取り上げられた6人のほか、白隠慧鶴と鈴木其一を加えた8人の代表作を一堂に会したものだ。

ロビー階には伊藤若冲と曾我蕭白、1階には長沢芦雪、岩佐又兵衛、狩野山雪、2階には白隠慧鶴、鈴木其一、歌川国芳の作品を展示している。

伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)
京都の青物問屋の長男として生まれる。40歳で家督を弟に譲り、画業に専念。写実と幻想を巧みに融合させ、濃密な色彩を使い、精緻に描かれた花鳥画から、墨の濃淡を自在に操り確かな画力を駆使して描かれた水墨画まで、個性的で多彩な作品を数多く残している。

曽我蕭白(そが しょうはく)
京都の商家に生まれ、伊勢や播磨を放浪した後、40歳を過ぎて京都に定住。18世紀京都画壇の奇才たちの中でも、最も激烈な表現を指向した。
漢画を学び、中国の仙人や聖人といった伝統的な故事を多く描いているが、その表現は独創的で狂気に満ち、ときに見るものの神経を逆なでし、混沌の渦へと陥れる。

長沢芦雪(ながさわ ろせつ)
京都・篠山の下級武士の子として生まれる。大胆な構図と才気溢れる奔放な筆法で独自の画境を切り開き、エンターティナー的な遊び心ある個性的な作品を多数残す。

岩佐又兵衛(いわさ またべえ)
戦国武将、荒木村重の子として生まれ、一族の滅亡後、母方の岩佐性を名乗り、京都で絵師として活動を始める。北庄(福井市)に移住し、二十余年を過ごした後、寛永14年(1637年)三代将軍徳川家光の娘、千代姫の婚礼調度制作を命じられ、江戸に移り住み、そこで波乱に満ちた生涯を終えた。
大和絵と漢画双方の高度な技術を完璧に修得し、どの流派にも属さない個性的な感覚に長け、後の絵師に大きな影響を与えた。

狩野山雪(かのう さんせつ)
九州肥前国の生まれ。京狩野の狩野山楽に16歳の頃弟子入りし、その後婿養子となる。妙心寺など京都の大寺院のための作画を多く残した。
伝統的な画題を独自の視点で再解釈し、垂直や水平、二等辺三角形を強調した理知的な幾何学構図で知られる。

鈴木其一(すずき きいつ)
尾形光琳に私淑した江戸琳派の祖、酒井抱一の忠実な弟子としてしばしば代作も務めるほどだったが、抱一が亡くなると個性的な作風に傾斜していった。
抱一の画風を受け継ぎながらも、冷徹で理知的に構成する画風は、抱一の叙情的で瀟洒な描写とは一線を画す。

白隠慧鶴(びゃくいん えかく)
臨済宗中興の祖と呼ばれる禅僧。駿州原宿(現在の沼津市)に生まれ、15歳のときに出家。「不立文字(言葉に頼るな)」といわれる禅宗において、夥しい数の禅画や墨跡を残している。
職業画家ではない、仏の教えを伝える手段として描かれた、一見ユーモラスで軽妙かつ大胆な書画は蕭白、芦雪、若冲など18世紀京都画壇・奇想の画家の起爆剤となった。

歌川国芳(うたわが くによし)
江戸本銀町生まれ。役者絵の国貞、風景画の広重と並び、武者絵の国芳として、第一任者となる。
戯画、美人画、洋風風景画にも発想の豊かな近代感覚を取り込む一方、役者絵や風刺画など、幕府の取り締まりをかいくぐり、機知に富んだ作品で庶民の支持を得た。

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
会期
 2019年(平成31年)2月9日(土)から4月7日(日)まで
会場 東京都美術館
観覧料 一般1600円(1400円)、大学生・専門学校生1300円(1100円)、高校生
800円(600円)、65歳以上1000円(800円)、中学生以下無料
※カッコ内は20人以上の団体料金
※2月20日(水)、3月20日(水)はシルバーデーにより65歳以上の人は無料。そのため混雑が予想されます。
問い合わせ先 TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

※写真は2019年2月8日のプレス内覧会で撮影。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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