アート

Posted on 2011-06-01
根津美術館で「伊万里・柿右衛門・鍋島 -肥前磁器の華-」


Writer:蓬田(よも)修一

根津美術館では、2011年5月28日(土)から7月3日(日)まで、コレクション展「伊万里・柿右衛門・鍋島 -肥前磁器の華-」を開催しています。

肥前地方(現在の佐賀県および長崎県の一部)で江戸時代に作られた陶磁器は、唐津焼、古武雄焼(こたけおやき)といわれる陶器と、新しい技術で作られた磁器があります。

この肥前磁器のなかで17世紀初め、朝鮮半島から伝わったものが伊万里焼といわれる染付磁器で、やがて伊万里焼から柿右衛門といわれる華やかな色絵磁器が完成し、藩窯として鍋島焼が始まります。

肥前磁器の楽しさは、中国の古染付(こそめつけ)や呉州染付(ごすそめつけ)、祥瑞(しょんずい)などを手本にした初期伊万里染付から、空間を生かした文様意匠の作品が生まれ、やがて赤、緑、黄、紫などの色彩で文様を描く和様の色絵磁器へと展開するところにあります。

始めは灰白色(かいはくしょく)であった白磁も、純白の白磁へと完成度を高め、柿右衛門と言われる華やかな色絵磁器が完成します。

17世紀中頃から肥前磁器は東南アジアから中近東諸国、そして ヨーロッパへと輸出され、海外市場の需要に応じた器形や文様の磁器が大量に作られました。

同時に、国内市場でも高級品が作られるようになり、元禄頃(1688-1704)には京都でも質の高い製品として知られました。

染錦手(そめにしきで)の皿や鉢はそれを代表するものです。

藩窯としての鍋島焼は、藩の献上品として、独特の意匠と規格による器形で、優雅な色鍋島や染付、青磁釉などの鍋島磁器を作り出しました。

本展では、平成10年に山本正之氏から寄贈を受けた肥前磁器を中心に、磁器の始まり、またその展開の様相を140点余りの作品で通覧します。

会期:2011年5月28日[土]~7月3日[日]
休館日: 月曜日
入館料金:一般1,000円 学生800円

根津美術館オフィシャルサイト

色絵三果文稜花皿(いろえさんかもんりょうかさら) 柿右衛門 江戸時代 17世紀 根津美術館蔵 (山本正之氏寄贈)

柿右衛門特有の柔らかさを感じさせてくれる白い肌の磁器に、華やかな色絵で桃、石榴(ざくろ)、仏手柑(ぶっしゅかん)が描かれている。
縁に施された鉄釉(てつゆう)、余白の白さを際立たせ、吉祥を意味する果物を華麗な装飾にしている。

染付白鷺蓮葉文皿(そめつけしらさきはすのはもんさら) 鍋島 江戸時代 17世紀 根津美術館蔵 (山本正之氏寄贈)

三羽の白鷺は、蓮葉の向こう側に伸びやかな姿で描かれ、背景は薄い瑠璃(るり)地となっている。
瑠璃色は筆跡もなく斑(まだら)もなく塗られており、その精緻さと対照的に青料(せんりょう)の滲(にじ)む蓮葉(はすのは)の描き方も秀逸である。

色絵荒磯文鉢(いろえあらいそもんはち) 伊万里 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵 (山本正之氏寄贈)

萌黄(もえぎ)色の地に金彩の唐草文を描くのは、中国明時代後期の金襴手(きんらんで)を模したもの。
波濤(はとう)から飛び上がる魚の図とともに中国、すなわち唐物を強く意識した図柄は、古伊万里最盛期の作風を示している。

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