アート / 出版

Posted on 2011-06-20
印刷博物館 「空海からのおくりもの」展で、高野版版木摺り実演


Writer:蓬田(よも)修一

印刷博物館では現在、企画展『空海からのおくりもの 高野山の書庫の扉をひらく』を開催しています。

この展覧会は、「山の正倉院」と呼ばれる高野山より、数々の争乱や災害をかいくぐり現代まで継承されてきた秘宝79点(国宝2点、重要文化財31点を含む)を公開するものです。

奈良時代からはじまる中世の印刷出版活動は、仏教文化を抜きには語れません。経典や護符のような仏教印刷物こそが出版の中心でした。特に鎌倉時代以降盛んになった高野山での出版は、高野版と呼ばれ、弘法大師空海請来の密教経典や教書を中心に、数多く世に送り出されました。

日本人の思想や文化は各寺院の出版活動によって支えられてきたとも言えます。出版黎明期からの様子を知ることができる本展は、日本の書物文化を考えるうえで、とても貴重な機会だといえます。

会期中の6月18日には、高野版版木を使った摺り実演が行われました。使用した版木は、高野山に建仁元年(1201年)に創業した経久(きょうきゅう)に伝わるものです。経久はお札など高野山にまつわる印刷物をてがけていました。

今回の摺り実演では、経久に残された貴重な高野版版木を使って行われました(今回使用した版木は、江戸時代(推定)につくられたものです)。

摺られたのは十三仏です。これは、初七日から三十三回忌まで13回の供養をつかさどる仏様が彫られたものです。

版木は恐らく何百回、あるいは千回以上も摺られてきたかもしれませんが、版面の状態は比較的よく、熟練の摺り師の腕もあわさり、細い線までもあざやかに摺りあがりました。紙が版木からはがされ、十三仏があらわれると、見ていた人たちからは感嘆の声が漏れました。

今回と同様の摺り実演は、7月10日(日)にも実施されます。

版木に墨を置き、少量の糊を混ぜて馬毛ブラシで丹念に伸ばす。使用する墨の量は多くない。

バレンでこする。今回使用したバレンの芯は、竹皮を薄く裂いて撚り合わせたもの。摺り師によれば、経久では布を撚り合わせた芯のバレンで摺っていた可能性もあるとのこと。

摺り上がった十三仏。細やかな線もきれいに表現されている。

【空海からのおくりもの展 開催概要】

会 期: 2011年4月23日(土)~7月18日(月・祝)     
会 場: 印刷博物館
入場料: 一般800円、学生500円、中高生300円

印刷博物館 オフィシャルサイト



Tags:
Posted in アート, 出版 | Comments Closed

Related Posts