アート

Posted on 2011-04-04
書道博物館で「拓本とその流転」展。東京国立博物館との連携企画。


Writer:蓬田(よも)修一

書道博物館(東京・台東区)では、2011年5月15日までの会期で、「拓本とその流転」が開催されています。

これは、書道博物館が毎年行っている、東京国立博物館との連携企画です。

今回は、書の学習において最も基本となる中国の著名な拓本を、その流転にも目を向け、さまざまなエピソードを交えて紹介しています。

見所は、明時代の有名な拓本コレクターである安国(あんこく 1481~1534年)が収蔵した石鼓文(せっこぶん)コレクションです。

石鼓文とは、太鼓に似た形の石に、天子が地方で狩猟したときの情景を、四言を基調とした韻文で刻したものです。

秦の始皇帝の文字統一前に使われた、篆書の母体といわれる大篆(だいてん)で書かれています。
 
安国は、自らが所有する広大な田畑の一部と引換に拓本を求めるなど、石鼓文の収集に心血を注ぎました。

展示では、その中でも特に優れた石鼓文の精拓三本などが紹介されています。

安国の石鼓文(せっこぶん)コレクションが展示されているコーナー(2階)。

ほかにも、今回の展示では貴重な拓本が満載です。

「泰山刻石(たいざんこくせき)-百六十五字本-」は、秦の始皇帝が天下を統一したさい、自らの功績をたたえるため泰山に建てた碑からとられた拓本です。

原石にはもともと223文字が彫られていましたが、倒壊するなどして、現在では10字程度の断片がつたわるのみです。

「泰山刻石(たいざんこくせき)-百六十五字本-」にある165文字は、もっとも多い文字数であり、極めて貴重です。

また、「蘭亭序-韓珠船本-」は、墨色の美しさに目を見張ります。
(展示期間:3/17まで書道博物館 4/19~5/15 東京国立博物館)

拓本というと、なじみが薄い人には地味な印象があるかもしれません。
しかし、文字の美しさだけでなく、墨色の色合いなどにも魅力があり、少しなれれば、時間がたつのを忘れて見入ってしまうほどです。

また、原石に彫られた文字が、長い年月の風雨の影響や、碑の倒壊などで現存していないものもあります。

そうした場合、文字が存在していたときにとられた拓本でしか、今となっては文字を見ることができません。

こうした拓本は、鑑賞用だけでなく、学術的にも極めて貴重です。

「拓本とその流転」展は、書や中国の歴史・美術に関心がある人だけでなく、タイポグラフィーやデザイン、クリエイティブ全般に関わる人にとっても、刺激を受ける展示に違いありません。

※4月23日には、ワークショップ「拓本に挑戦!」が、開館中随時、開催されています。

拓本を鑑賞したら、次は自分で拓をとってみませんか。
専門の職員のかたが、丁寧に教えてくれます。
(参加費無料。当日の入館料は必要です)

書道博物館オフィシャルサイト

1階展示フロア

2階展示フロア


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