アート / コラム・論文

Posted on 2025-08-04
現代アートが「理解しにくい」のはなぜか?


現代アートが「理解しにくい」と感じられる理由には、以下のような要因が考えられます。

それぞれ具体例を交えながら説明しましょう。

  1. 美術の枠組みを壊しているから(=見た目がアートらしくない)

具体例:マルセル・デュシャン《泉》(1917)

これは既製品の男性用小便器に「R. Mutt」という署名をして、美術館に展示しようとした作品です。

絵画や彫刻といった従来の「技術」に基づく表現ではなく、「選ぶこと」自体が芸術行為だと主張しました。

結果として、「なぜこれがアートなのか?」という問いが生まれ、観る人の混乱を引き起こします。

  1. 「感情」や「美」ではなく、「思考」や「問い」を重視する

具体例:草間彌生《無限の鏡の間》

鏡張りの部屋にLEDの光を吊り下げ、無限に広がるような錯覚を生むインスタレーション作品。

美しさはありますが、それ以上に「自己とは何か」「無限とは何か」という哲学的な問いを投げかけます。

感覚的な「きれい」や「すごい」では終わらず、何を意味しているのかを考えないと理解できません。

  1. 文脈(コンセプト、社会背景)を知らないと意味が伝わらない

具体例:バンクシー《Girl with Balloon》とそのシュレッダー事件(2018)

バンクシーの代表作がオークションで落札された直後、自動で作品が半分破かれました。

この「破壊行為」には、アート市場や資本主義への痛烈な批判が込められていました。

背景を知らないと、ただの「いたずら」としか見えないため、「なぜこれがニュースになるのか」が理解しづらいのです。

  1. 作家自身の内面や個人的体験がベースになっている

具体例:宮島達男《Time Installation》シリーズ

デジタルカウンターで数字が絶えず変化する作品で、死や再生、時間の循環を象徴します。

彼は被爆地・長崎に強い関心を持ち、仏教的な「無常観」や「再生」というテーマを込めています。

ただの数字の変化に見えるが、深い宗教観・死生観が根底にあるため、知らないと理解しづらい。

  1. 観客の「参加」や「解釈」が求められる

具体例:オノ・ヨーコ《Cut Piece》

オノ・ヨーコが舞台に座り、観客に自分の服をハサミで切らせるというパフォーマンス。

観客の行為によって作品が成立するため、「作品=完成されたもの」という概念を覆します。

見るだけでなく「参加する勇気」「自分の倫理観」が問われる作品なので、難しく感じられます。

まとめ

現代アートが理解しにくいのは、次のような理由が複雑に絡み合っているためです。

・表現が伝統から逸脱しているので、技法や形式ではなく「考え方」が重視される。

・観客の知識や解釈が前提となるため、背景知識や問題意識がないと意味がつかみにくい。

・作品の完成形が存在しないこともある。また、観客の関与で作品が変化・成立する場合もある。

こうしたことから、鑑賞者の側で「理解しようとする姿勢」や「作品の背景を調べる習慣」が求められるのです。

(M&C編集部 2025/8/4)

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