アート / 歴史

Posted on 2011-09-02
「アートフェア東京2011」に約4万3000人来場  “アジアにおける東京”を代表するアートイベントへ


「アートフェア東京2011」会場風景


Writer:蓬田(よも)修一

2011年7月29日(金)から31日(日)まで、東京国際フォーラムで開催された「アートフェア東京2011」が、7月28日のプレビューも含む会期中の4日間で、延べ約4万3000人を超える来場者を迎え、盛況のうちに終了しました。

第6回目を迎えた本年のアートフェア東京は、2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、当初4月を予定していた日程を延期しての開催となりました。

震災の影響が懸念されましたが、国内外の22都市から133軒のギャラリーが出展し、古美術・工芸品・日本画・洋画・近代美術・現代美術といった幅広いジャンルと時代の作品を展示販売しました。

また、メインスポンサーであるドイツ銀行グループをはじめとする企業の支援を受け、「アートを開く」をテーマに、関連企画の充実を図ることで、東京を代表するアートのイベントとしての新しい第一歩を踏み出すことができました。

「アジアにおける東京」というビジョンのもと、今年からの新たな試みとして設けられたPROJECTSアーティスティック・コミッティ・メンバーにより準備された「アーティスティック・プラクティス」では、アートの有識者100名のアンケートの結果を踏まえ決定した篠田太郎氏と高嶺格氏の作品が、第二会場ロビーギャラリーにて特別展示されました。

また、会場内ラウンジや日本経済新聞本社ビルでは日独交流150周年を記念し、ドイツ銀行コレクションから日独のアーティスト計6名の作品を特別公開したり、サテライト会場で映画『ハーブ&ドロシー』を特別上映するなど、他にもさまざまな催しが会期中行われました。

震災後にアートを通じて社会を考える機会として、さまざまなトークシリーズを開催した他、チャリティプログラム「アート・ファン!」ではアーティストによって描かれた「うちわ」の作品販売や、震災と向き合い活動する作家による子供向けのワークショップを行い、「アート・プリンツ」では出展画廊より提供頂いたカタログなどを、チャリティ販売しました。チャリティプログラムの収益は義援金として日本赤十字社を通じ、東日本大震災の復興支援のために寄付致します。

アートフェア東京のエグゼクティブ・ディレクター金島隆弘は、次のような統括コメントを発表しました。

東日本大震災、原発問題、そして延期開催により夏のバカンスシーズンと重なる等の影響により、入場者数は前回を下回りましたが、ジャンルを問わずほぼ前年並みに取引が行われたアートフェア東京2011となりました。

また、関連企画やチャリティプログラムの充実、アジア周辺諸国や地域からのゲストによるトークセッション、ドイツ銀行グループや経済産業省などとの積極的な連携等により、東京を代表するアートのイベントとしての新しい第一歩を踏み出すことができたと感じています。

幅広いジャンルのアートを扱うアートフェア東京は、今後、そのバランスを取りながら、それぞれのジャンルにおいて更なるクオリティの向上に注力することで、東京ならではの個性あるアートフェアに発展させていきたいと考えています。

「アートフェア東京2011」会場風景

以下、アート関係者や出展者のコメントです。

■森美術館館長 南條史生氏

一番おもしろかったのはPROJECTSの若いギャラリーで、ギャラリーがいち早く発見した若手作家を見られました。

国内のマーケットを強くするため、また日本のギャラリーが海外に出展する時に、国から補助金を出してもらえたらいいと思っています。

海外のアートフェアのようにギャラリーに出品作品や作家を指定したりして、緻密にコントロールしてもいいと思います。

■森美術館チーフ・キュレーター 片岡真実氏

震災後の大変な状況で、海外からの出展やコレクター、関係者の来訪が期待できないなか、これだけの規模でフェアをオーガナイズできたことが何より素晴らしいです。

若手のアーティストを紹介していたPROJECTSは、作家の印象をさらによくするために、もう少し広い環境をつくる方がいいと思います。

アートフェアがこれだけ世界中に増え、ART香港のようにアジアを代表するフェアも確立されつつあるなかで、アートフェア東京ならではの独自のアイデンティティが今後はより明確に求められると思います。

今後に期待しています。

■京都市立芸術大学学長 建畠晢氏

回を重ねることで、非常に多くの人に親しまれるアートフェアとして求心力が高くなった印象があります。

震災の影響がなかったとは言えないですが、日本では真打ちのフェアだと思いました。

特に現代美術の作品がおもしろかったし、日本の新しい美術の方向性とスタンダードを示唆する役割は果たしたと思います。

海外の画廊が参加したくなるような、また、韓国や中国のアートフェアに対抗する国際性があって欲しいし、その希望はあると思います。

■横浜美術館学芸員 木村絵理子氏

今回のアーティスティック・プラクティスで、エネルギー問題に注目した高嶺格氏の「スーパーキャパシタ」のプロジェクトが含まれていた偶然には(原発事故以前から計画されていた展示と聞いています)、改めてアーティストの知的直観を感じずにいられませんでした。

東日本大震災やその後の原発事故により、数多くの展覧会やその他アート関連のイベントが直接的・間接的に影響を被った中で、マーケットにはとりわけ表面化しづらい影響があったことでしょう。

そのような状況下で即時性のあるアートフェアを開催できたことは、国内だけでなく、とりわけ海外に向けた良いアピールになったものと思います。

■ドイツ銀行グループ チーフ・カントリー・オフィサー デイビッド・ハット氏

主催者や出展ギャラリーをはじめ関係者のみなさまのご尽力により、アートフェア東京2011が多くの来場者を得て成功裡に終了しましたことを、メインスポンサーとして大変嬉しく思います。

また今回、日本の現状を踏まえ、出展アーティストや非営利団体(NPO)等ともパートナーシップを組み、東日本支援に向けたプログラムを展開できたことは、非常に意義深いことであると感じております。

「Art works(アートを活かす)」という私たちのコンセプトが、今回アートフェアに関わったみなさまと共有できたことを誇りに思うと同時に、今後のアートフェア東京のますますのご発展をお祈り申し上げます。

■渡邉三方堂 渡邉祥午氏

今回はあるお客様のコレクションをお借りして展示しました。

一体感のある展示物に失礼にならないように微に細に気を配って内装をしつらえたつもりです。

一番いいブースだというお声もいただきました。

展示を見たお客様に喜んでいただきたいし、ゆくゆくは商売に繋がればいいと思っています。

アートフェア東京はかなり幅が広いので、海外のお客様も含めて日本の美しさや民芸の良さを感じ、理解していただけたと思います。

■中長小西 小西哲哉氏

私どもは今回、深見陶治という作家や氏の作品を多くの人に紹介できるいい機会だと考え、プロモーションに集中し、気骨を見せる展示をしました。

実際にアートフェア東京に出展し、「美しい」「素晴らしい」という感嘆の言葉が多く聞こえ、深見陶治は予備知識の必要なく人を感動させられると再確認できました。

4万人超の美術ファンに深見陶治作品の魅力を示したことは、何らかのかたちで今後に生きてくると信じています。

■ギャラリー銀座アルトン 横垣明美氏

去年に続き今年も卯野和宏の作品を出展しました。

作家には今年のアートフェア東京に向けて1年間頑張ってもらいました。

その結果、おかげさまで震災の影響もなく、完売いたしました。

雑誌などでも取り上げていただいて反響があったこと、去年のアートフェア東京でも完売したことが突破口になりそれが今年に繋がっていると思います。

メディアへの宣伝が行き届き、これだけの動員数があるのは、やはりすごい力です。

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なお、次回のアートフェア東京2012は、2012年3月30日から4月1日(プレビューは3月29日)の日程にて、東京国際フォーラムでの開催を予定しています。

アートフェア東京 公式サイト

「アートフェア東京2011」会場風景


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