アート
Posted on 2012-01-14
菊池寛実記念 智美術館で「金重有邦 生まれくるもの」展 新しい備前焼の可能性
菊池寛実記念 智美術館(東京・港区)で、2012年1月21日(土)~ 3月31日(土)、
「金重有邦 生まれくるもの」展が開催されます。
金重有邦(かねしげ・ゆうほう)は、昭和25(1950)年、岡山県備前市伊部に、陶芸家、金重素山(そざん)の三男として生まれ、武蔵野美術大学で彫刻を学んだのち、父のもとで陶芸を始めました。
父、素山(1909~95)は、備前焼中興の祖とされる兄、金重陶陽(とうよう 1896~1967)とともに、桃山時代に焼造された古備前の土味と焼け成りを求めてその再興に尽力し、ことに火襷(ひだすき)の焼成に創意工夫し、現代の備前焼の展開に大きな影響を及ぼしました。
有邦の作陶も、彼ら二人が築いた礎の上にあるものですが、2002年頃からは、陶陽が見出した上質な「田土(たつち)」の代わりに自ら吟味した「山土(やまつち)」を用い、土に合った成形技術や新しい窯による焼成法を探求し、独自の作風を展開しています。
「山土」ならではの土味と焼け成りを追求した造形は、陶陽、素山からの離脱を示し、新しい備前焼のあり方への示唆に富んでいます。
「生まれくるもの」と題した本展では、この10 年間に制作された作品のなかから厳選したおよそ80 点の花入、水指、甕、茶器、茶碗を展観いたします。(※会期中、展示替えがあります)
備前、焼締め陶の流れ
備前の地で焼締め陶の焼造をはじめたのは平安時代末期と言われています。
須恵器の技術を継承した灰青色の肌が、現在のような茶褐色の色合いとなったのは室町時代の頃のことで、当時の生産の中心は、壺や甕、擂鉢などの日用雑器でした。
「投げても割れない」という堅牢な製品は、西日本をはじめ日本国中に流通していました。
室町中期になると、それらの素朴な器は、茶の湯において「冷え枯れた」美意識を表象するものとして、茶道具に見立てられ、使われるようになります。
やがて、桃山の頃には花入や水指など茶の湯を目的とした器が焼造され、備前焼は茶の湯に欠かせない存在となりました。
「古備前」とは、江戸初期以前に焼造された備前焼の総称ですが、なかでも桃山時代の茶陶は、可塑性の高い田土を轆轤で引き上げた造形で、歪みや箆目、豪快な窯変などを特徴とし、当時の陶工の気概、息遣いを感じさせるものです。有邦の伯父、陶陽が着目したのも、それらの活力に満ちた造形でした。
彼は、弟の素山とともに、桃山風の備前焼を復興するべく、田土という理想的な胎土を見いだし、小ぶりの登窯を新たに築き、昭和の備前焼の展開に大きな影響を及ぼしました。
金重有邦の造形―古備前を超えて
有邦氏の作陶も陶陽、素山兄弟の恩恵を受けて出発し、彼もまた備前焼の歴史、伝統を継承し、茶陶の制作に軸足をおいています。
その一方で、未来を模索し、独自の作風を展開させてきました。
2002年頃からは、上質の「田土」の代わりに、自ら吟味した「山土」を用い、新たな登窯を築いて焼成しています。
山土は、田土にくらべて可塑性が低く、一気呵成に仕上げることになりますが、土に寄り添うがごとくの造形は、有邦氏の轆轤のリズムと、土の素朴な味わいとの融合を見せています。
また、2006年の大甕の制作を経て考案した紐作りと轆轤を組み合わせた独自の成形法は、フォルムの自在さやダイナミックな焼け成りなど、作品に重厚さをもたらしています。
こうした作家の試みは、陶陽のもたらした、桃山備前を拠り所としてきた造形観からの離脱であり、焼締め陶の「土」と「焼き」の魅力を再発見させてくれるものです。
※田土:田んぼの地下から掘り出される、可塑性の高い土のこと。
※山土:有邦氏の場合は、主に田土のやや上の層にあるざっくりとした土のこと
■■展覧会概要■■
○展覧会名:金重有邦 生まれくるもの
○会期:2012年1月21日(土)~ 3月31日(土)
○観覧料:一般1,000円/大学生800円/小中高生500円
○主催:財団法人菊池美術財団
○会場:菊池寛実記念 智美術館
○開館時間:午前11時から午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
○休館日:毎週月曜日
○関連行事:会期中、講演会、対談、学芸員による展示解説、及びナイトミュージアム、西洋館見学会を開催
■■■■招待券プレゼントへの応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。 「金重有邦 生まれくるもの」展 無料招待券プレゼント■■■■
「金重有邦 生まれくるもの」展の無料招待券を、抽選で5組10名様にプレゼントします。
以下のフォームより、お名前、メールアドレス、ご住所をお書きになり、ご応募ください。
締め切りは、2012年1月31日24時です。
※Media & Communication のプライバシー・ポリシーはこちらをご覧ください。
Related Posts