アート

Posted on 2019-03-19
【レビュー】シュルレアリスムを武器に、人間や社会を批評「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」




《Poisson d’Avril(四月馬鹿)》 1930年 東京国立近代美術館蔵 


社会批評を作品として表現
東京・竹橋の東京国立近代美術館で「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」(Laugh Off This Hopeless World: Fukuzawa Ichiro)が開催中だ(会期:3月12日~5月26日)。

福沢一郎は1898年(明治31年)、群馬県に生まれた。1930年代には、日本にシュルレアリスムを紹介して、前衛美術運動のリーダーとして活躍。生涯を通じて社会批評を作品として表現し続けた。

1991年(平成3年)、文化勲章受章。翌1992年(平成4年)、東京で亡くなった。

福沢は「謎めいたイメージ」の中に知的なユーモアをまじえ、社会の矛盾や人びとの愚かさを諷刺的に笑いとばした。

今回の展示では、福沢の多彩な画業を、時代順に10章に分けて、約100点の作品で振り返る。

1. 人間嫌い:パリ留学時代
福沢一郎は、はじめ彫刻家を志し、1924年から31年までパリに留学するが、留学中に絵画制作へと進む。古典から同時代の作品まで幅広い西洋美術研究の上で制作された初期作品には、すでに社会を見つめる個性的な視点が認められる。

2. シュルレアリスムと諷刺
福沢は、パリ留学中にシュルレアリスムの画家マックス・エルンストの作品に出会い、その影響のもとに、古い雑誌の挿絵を奇妙に組み合わせた作品を数多く制作する。不条理なユーモアに満ちたこれらの作品は、1931年の独立美術協会展で発表され注目を浴びた。

3. 帰国後の活動
1931年に帰国した福沢は、パリで身につけたシュルレアリスムの手法を応用しながら、日本の社会にシニカルな視線を向け、独自の諷刺的な作品を描くようになる。彼の立ち位置はプロレタリア芸術とも異なり、あらゆるイデオロギーから自由だった。

4. 行動主義(行動的ヒューマニズム)
1930年代半ば、文学においては小松清がフランスのアンドレ・マルローやアンドレ・ジッドを紹介しながら行動主義(行動的ヒューマニズム)を提唱する。ファシズムに抗して人間精神の自由を守ろうとするこの思想に、福沢は美術家として共鳴し、《牛》(1936年)などを発表して、若手画家たちに影響を与えた。

5. 戦時下の前衛
1939年に美術文化協会を結成するなど前衛画家たちのリーダーとして活躍していた福沢は、シュルレアリスムと共産主義との関係を疑われ、1941年に検挙される。その後、戦争協力を求められる。戦時下の彼の活動の真意は、再検証の必要がある。

6. 世相をうつす神話(1)
戦後、活動を再開した福沢は、混乱する世相を、ダンテ「神曲」に託して表現し、また代表作《敗戦群像》(1948年)を発表する。戦前から追求していたヒューマニズムの姿勢が、戦時下の体験を経て新たな段階に達したといえる。

7. 文明批評としてのプリミティヴィズム
福沢は1952年に渡欧し、その後ブラジルやメキシコを経由して54年に帰国する。中南米で目撃した人びとや造形物の原初的な生命力は、福沢のイマジネーションを大いに刺激した。

8. アメリカにて
福沢は1965年にアメリカを旅する。ちょうど黒人の公民権運動が高まりを見せていた時期だ。自由を求める運動のエネルギーを、福沢は絵画作品の連作の中に描いた。また、ニューヨークの人々を機知にとんだ構図で写真に収めた。

9. 世相をうつす神話(2)
1970年代になると、福沢はふたたびダンテ「神曲」に基づいた地獄の連作に取り組み、さらに「往生要集」をもとに東洋の地獄を、そしてそれらをふまえて、現代の世相を地獄になぞらえてユーモラスに描いた。

10. 21世紀への警鐘
現代社会へのメッセージを、ただの時事諷刺に終わらせるのではなく、古典をふまえて普遍的な人間の問題として表現するという姿勢は、晩年に至るまで一貫していた。展覧会の最後に、21世紀への警鐘を示す作品を紹介する。


福沢一郎展 このどうしよもない世界を笑いとばせ
会場
 東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期 2019年(平成31年)3月12日(火)から5月26日(日)まで
観覧料 一般1200(900)円、大学生800(500)円、高校生以下および18歳未満は無料
※( )内は20人以上の団体料金。

《牛》 1936年 東京国立近代美術館蔵 



《悪のボルテージが上昇するか21世紀》 1986年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵 




以下は3月11日に行われたプレス内覧会で撮影した会場のもようです。

 



 



 



 






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