アド・ミュージアム東京では、特別企画「広告跳躍時代」が開催されています(会期=2009.07.29〜10.03)。
これは、1970〜80年代の広告に焦点をあてた展示会です。
この時期、日本はドルショックや2度の石油危機を乗り越えて、世界第2位の経済大国へと躍進しました。
広告も、理論や手法を格段にレベルアップさせ、広告費は7倍近くに増えました。
まさに広告が大きく躍進し、元気な時代だったのです。
70年代〜80年代を代表する、多彩な広告作品。
会場には、「広告が元気な時代」を代表するテレビCM、新聞広告、ポスターなどが、7つのカテゴリーに分けて展示されています。
展示の様子です。
「広告跳躍時代」〜世界に認められたTVCM。「負」の表現がCMで許された時代。
連動企画として、シルバーウィークの最終日(9/23)、山川浩二氏(広告研究家)によるミュージアムトークが開催されました。
山川氏は、1960年〜80年代、電通のクリエイティブ部門に所属し、数々のTVCM話題作を世に送り出してきた人です。
多くの作品が海外で評価され、いくつもの広告賞を受賞しました。
ミュージアムトークでは、国際的に評価された山川氏などのTVCMが紹介されるとともに、普段あまり語られることのない、広告の「負」の表現についてのお話を聞くことができ、大変興味深い内容となりました。
ここでは、そのトークのハイライト部分をご紹介しましょう。
聞き手は、アド・ミュージアム東京 企画学芸室長・坂口由之氏です。
(下のムービーは、ミュージアムトークのオープニング部分。右が山川氏、左は坂口氏)
外国人には理解されにくい日本CM。
日本のCMは、世界の中でも特別な表現をしています。
まわりくどいというか、まわりまわった表現をしてから、やっと商品が登場するというCMが多いのです。
わたしたち日本人は、贈り物をするとき、「つまらないものですが」といって相手に渡します。
いい品物だけれども、「つまらないもの」とまず卑下する。
そうすると相手に気持ちが伝わりやすいんですね。
日本人独特のコミュニケーションです。
日本人同士ならわかりあえますが、外国人にはよくわかりません。
CMも同様に、外国人からは「何のCMなの?」と思われるものが多いです。
外国人には理解しにくい、ムードで迫る作品が多いのが、日本のCMの特徴です。
タブーに挑戦! 「死」を扱ったCM。
昭和48年に第一次オイルショックとなり、不況が日本を襲いました。
銀座のネオンも消えました。
ネオンの消えた銀座をこの目で見ましたが、怖いような感じでしたね。
「広告なんかいらない!」。
そんな声さえ聞かれた時代です。
この時期につくったのが、明治生命のCMです。
「I am a champion」と連呼しつづけ、パンチングボールを打ち続けるゼンマイ人形の猿のボクサーが、最後には動かなくなり、白目をむくというストーリーです。
白目をむくというのは、死の象徴です。
CMで死を表現するなんて、タブーでした。
白目をむくタイプのものと、黒目のままのタイプのものと、2種類つくりましたが、当初は白目をむくタイプのCMはたぶん放映しなかったと覚えています。
それが、カンヌで賞をとったら、日本でも放映するようになりました。
このCM以降、死のような「負」の表現が、CMでもできるようになったのです。
不況という時代背景があったから、CM表現もいろいろ模索しますが、そんな中で死を表現するCMが許されたということも言えると思います。
賞を取るCMをつくるのは簡単!?
「海外の広告賞とりたい!」という気持ちでCMをつくっていました。
おかげさまで、カンヌやクリオなどで受賞してきましたが、海外の広告賞を取るための真髄のひとつの方法は、負の要素を入れることです。
ハッピーだけで表現したらダメ。
負の要素を入れることで、表現が強くなります。
それさえすれば、賞を取る可能性は今でも十分にあると思いますよ。
それをみんなどうしても避ける。
日本のスポンサーはマイナーの表現を入れたがりません。
優れた経営者は、負の要素の入ったCMのよさがわかるものです。
ところが、スポンサー企業内で、下から上へと企画をあげていくと、途中でボツなってしまいがちです。
日本のCMに負の要素が少ないのは、そういう理由もあるのだと思います。
表現は「プラス」と「マイナス」のコントラスト。
ハッピーな要素と負の要素、そのコントラストが表現なのです。
負の要素を少し入れると、本当のようにみえるんです。
プラスの要素だけだと、ウソっぽく見えてしまうんですね。
おしるこに少しだけ塩を入れるのと同じですネ。
最近のCMでは、ソフトバンクの白い犬が出てくる作品はいいですね。
おとうさんが白い犬で、しかも犬を人間扱いしている。
おとうさんが本当の人間だったら、これほど長いシリーズにならなかっでしょう。
大阪のおもしろCM。東京のまじめCM。
わたしは大阪生まれですから、大阪人の気風というのがわかります。
わたしから見ると、東京はまじめ一点張りでした。
わたしがCM作りをしていた頃は、そのまじめ一点張りを、少しこわしてみたいと思っていた。
そうすることで、表現の幅が広がりはじめるからです。
そうした気持ちが、CMに「負」の要素を入れることにつながっていったのだと思います。
アド・ミュージアム東京
(VIDEO,TEXT/YOMO)
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