アート / コラム・論文
Posted on 2026-03-26
夏の西洋絵画 傑作10 ルネサンス~近代
M&C編集部
蓬田修一
夏をモチーフにした西洋絵画を鑑賞してみよう。ルネサンスから近代までの時代に描かれた傑作10作品を選んだ。
時代によって「夏」の表現はひとつの傾向を持っている。ルネサンス・バロック期は収穫や豊穣の象徴であり、19世紀の写実主義・印象派では農村生活や自然光を描く。そのあとの象徴主義・近代絵画の時代は幻想・感情・精神世界が描かれる。
これら傑作を鑑賞しながら、それぞれの時代のヨーロッパの夏に思いを馳せてほしい。作品は時代順に並んでいる。
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1 《四季》より「夏」Summer ジュゼッペ・アルチンボルド 1563年
野菜や果物を組み合わせて人物像を作る独創的な作品だ。一度見たら忘れることはないほどの強力なインパクトを持つ。日本国民誰もが、どこかで一度は見たことがあるのではないだろうか。
顔のパーツは夏の収穫物である。豊穣と生命力を寓意的に表している。
描かれているのは、自然科学に興味を抱いていた神聖ローマ帝国、皇帝マクシミリアン2世である。
皇帝はこの独創的な肖像画を気に入ったのだろうか?
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2 《穀物の収穫》The Harvesters ピーテル・ブリューゲル 1565年
時期は7月か8月。麦の収穫をする農民たちを描いた作品。日差しの中で働く人々と、木陰で休む人々の姿が描かれ、夏の農村生活が生き生きと表現されている。
農業と農民の様子が分かる重要な風俗画でもある。
ブリューゲルが描いた「四季」シリーズのひとつ。
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3 《夏》または《ルツとボアズ》Summer ニコラ・プッサン 1660年頃
本作は「旧約聖書」のなかの「ルツ記」 の物語を描く。
寡婦ルツは姑のナオミとともにベツレヘムに移り、生活のために落穂拾いを始める。
落穂拾いとは、畑を持たない寡婦や外国人が収穫し終えた後の落穂を拾い食料とすることである。貧困者への救済制度であった。
ルツは亡き舅エリメレクの従兄弟ボアズの畑で落穂拾いをし、ボアズは懸命に働くルツの姿に惹かれてふたりは結ばれることとなった。
中央に、頭にターバンを巻いて、豊かな身なりをして立っているのがボアズである。
若い寡婦であるルツは彼の足元に跪き、落穂を拾わせてくれるようにお願いしている。
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4 《蕎麦の収穫:夏》Buckwheat Harvest – Summer - ジャン=フランソワ・ミレー 1868年~1874年の間
ミレーは晩年、連作『四季』を手掛け、これはそのなかのひとつだ。
夏の暑さの中でも懸命に働く農民を描く。
ミレーは生前、自らの画業が評価を得ながらも、病と貧困に苦しんだ。苦しい環境のなかでも懸命に絵筆を取る自らの姿を、夏の盛りのなか、農作業に励む農民の姿に重ねたのかもしれない。
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5 《夏の日》Summer’s Day ベルト・モリゾ 1879年
湖に浮かぶボートに、ふたりの女性が乗る。ひとりは水面を横切る水鳥を見つめ、もうひとりはこちらを向いている。
光に満ちた画面、風の気配が繊細に表現され、軽やかな夏の空気が感じられる。
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6 《プールヴィルの断崖》Cliff Walk at Pourville クロード・モネ 1882年
モネは1882年、ノルマンディー地方にある海辺の街プールヴィルとその隣町ヴァランジュヴィルに滞在し、およそ100点の作品を描いた。
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7 《ラ・クローの収穫風景》The Harvest フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年
南フランスのアルル郊外の農村風景。
収穫時期の畑は黄金色で、太陽光が降り注ぎ、自然のエネルギーと生命力が広がる。
晩年のゴッホ作品のような激しさは、ここにはない。ゴッホの心境も穏やかであったのだろう。
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8 《真夏の夜》Midsummer Eve エドワード・ロバート・ヒューズ 1908年
灯りを手にした小さな妖精たちが、夜の森を照らし出す。
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9 《夏の夜の海岸》Summer Night Inger On The Beach エドヴァルド・ムンク 1889年
ムンク20代半ばの作品。後年の不安に満ちた作風の面影が、早くも感じられる。
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10 《四季》より「夏」Summer アルフォンス・ミュシャ 1896年
大きな花飾りを頭に載せた美しい女性が、足を水に浸し涼を取っている。
ミュシャが初めて手掛けた装飾パネル画である。装飾パネル画とは広告コピーのないポスター。ミュシャは商業用ポスターで名を挙げ、装飾パネル画の依頼が来た。
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