アート

Posted on 2021-05-27
「加藤翼 縄張りと島」 協働作業や連帯による可能性



《The Lighthouses – 11.3 PROJECT》  2011 photo: Kei Miyajima © Tsubasa Kato / courtesy of MUJIN-TO Production 


初の大型個展
東京オペラシティアートギャラリーで、2021年(令和三年)7月17日から9月20日まで「加藤翼 縄張りと島」が開催されます。

加藤翼は、複数の参加者による協働作業が生み出す行為を映像、写真などの作品として発表し続けています。

数多くのリサーチやプロジェクトをグローバルに展開し、高い評価と注目を集めている現代作家のひとりです。

加藤翼の作品は、自然災害、都市開発、環境破壊などで地域のコミュニティが解体の危機に瀕するなか、人々が自発的に参画し、一体となって何かを実践することの意義を提示します。

主な出品作品
《The Lighthouses – 11.3 PROJECT》
加藤の制作のうえで大きな転機となった作品。東日本大震災後、加藤は福島県いわき市で避難所への生活物資の支給や炊き出し、瓦礫の撤去作業にボランティアとして参加するかたわら、家を失った家主たちから大量の木材の提供を受けました。

3.11を逆にした11月3日の文化の日、加藤の呼びかけで500人もの人々が集まり、津波で壊された家々の瓦礫で作った灯台を模した巨大な構造物を、力を合わせて引き起こしました。

これが契機となり、このプロジェクトは復興を目指す地域の祭事へと発展しました。
(この記事冒頭の写真が《The Lighthouses – 11.3 PROJECT》です)

《2679》
お互いを縛られた3人の演奏者(三味線、琴、太鼓)が君が代を演奏しています。

自由に演奏しようとすると、他のメンバーの妨げになり、演奏が成り立たちません。

現代社会の分断、対立を想起させると同時に、不自由を克服しながら懸命に演奏を続ける彼らの姿からは、個人と共同体(社会)との関係の複雑さや自由というものの本質が浮かび上がらせます。

なお、タイトルの数字は、1940年に開催された「紀元二六〇〇年式典」に由来しています。

《2679》 2019 © Tsubasa Kato / courtesy of MUJIN-TO Production 

《Superstring Secrets: Tokyo》
「秘密」を紙に書いて投函してもらう「Superstring Secrets」は、進行中のプロジェクトです。

加藤は2020年2月から5月まで香港に滞在。参加予定の展覧会は新型コロナウイルスの影響で延期となり、帰国もままならない状況下で、極力人と接しないこのプロジェクトをスタートさせました。

各々の秘密によってできてしまった「心理的な距離」に焦点を当て、その秘密を「結び、つなぎ合わせ、たばね、編み上げ」た1本のロープとして提示することで、秘密の歴史や人間関係の分断などの問題を可視化させています。

《Superstring Secrets: Tokyo》 2020 © Tsubasa Kato / courtesy of MUJIN-TO Production 

このほか《Listen to the Same Wall》(2015)、《Woodstock 2017》(2017)など、代表作をほぼ網羅する、2007年以降の映像作品26点および写真、模型などで構成。加藤翼のこれまでの歩みと全貌を紹介します。

加藤翼
1984年生まれ。2007年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、2010年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了

加藤翼 photo: Kana Tarumi 

加藤翼 縄張りと島 Tsubasa Kato: Turf and Perimeter
会期 2021年(令和三年)7月17日(土)から9月20日(月)まで
会場 東京オペラシティ アートギャラリー
休館日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、8月1日(日・全館休館日)
入場料 一般1200円(1000円)、大・高生800円(600円)、中学生以下無料
※( )内は各種割引料金。ただし団体受付・団体割引の実施は当面の間休止。
※同時開催「夏の風景:寺田コレクションの日本画」「project N 83 衣川明子」の入場料を含みます。
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
   
     




Posted in アート | Comments Closed

Related Posts