アート
Posted on 2026-03-01
展覧会レビュー「ENCOUNTERS」サウンドアートに注目
次世代のメディア芸術を担うクリエイターが成果を発表する「ENCOUNTERS」(主催:文化庁)が、東京・京橋のTODA HALL & CONFERENCE TOKYOで開催中だ(会期:2026年2月28日〜3月8日)。
文化庁は、若手クリエイターの創作活動を支援する「文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業」を平成23年度から実施している。
その令和7年度の成果発表イベントが「ENCOUNTERS」だ。
採択された40組のクリエーターが、会場で活動の成果を披露している。
M&C編集部は開幕前日の2月27日、内覧会を取材した。
発表作品のなかから編集部が注目した作品を紹介する。
取材者が音楽やサウンドを取り入れたアート作品への関心が高いこともあり、ここで紹介するのはサウンド関連4作品と、ロボット1作品、国土・国境を扱った1作品、あわせて6作品だ。
ここで紹介した作品以外にも、AI、アニメーション、ゲーム、インスタレーションなどが発表され、どれも興味深い内容だ。
会場に行く前に、自分が関心ある分野の作品内容を公式サイトで確認してから会場で実際に見てみると鑑賞が深まるだろう。
《Opto-Sonic: Reinventing VLC for Ambient Voices》 すずえり(鈴木 英倫子)
光に音声重畳を行う可視光通信の仕組みを利用し、LEDとオシレータ、レコーダーを使ったポストアンビエント楽器だ。5つのキューブ型デバイスで構成される。それぞれのキューブはサイン波、ノコギリ波など独自の音を発し、組み合わせることで、シンセサイザーのような音作りを楽しむことができる。
《電車エレクトロニカ~神戸篇~「阪神電鉄とラジオと街 みんなを乗せていくよ」》 鈴木 椋大
電車のモーターは実は微弱な電波を発している。普通に売っている小型ラジオを走る電車に向けて電波を受信すると、車両ごとに違う音(ノイズ)が聞こえる。この音を素材に沿線の歴史やエピソードを音の物語として紡ぎ、地元の人々とともに作品化するプロジェクトだ。阪神電気鉄道開業120年、日本のラジオ放送100年、阪神・淡路大震災から30年という節目の年に、神戸で震災を含む地域の記憶に注目し、音を通じてその継承を試みている。
《台湾原住⺠の音楽ドキュメンタリー“stillhualian” 上映会&ライブイベント》 スタジオ石(代表:Mr.麿)
映像ディレクターでありラッパーでもある作者が、台湾先住民のHIPHOPアーティストとともに音楽をつくる姿を捉えたドキュメンタリ一映像『stillhualian』の上映と、出演者によるライブを同時開催。映像とライブ音楽による新たな表現を探る。ライブ実施後はライブ映像を加えたドキュメンタリー映画を製作し上映を目指す。発表時のテーブルの上には、台湾原住民の音楽に関する興味深い資料が置かれていた。
《声の楽器と耳のロボットによるサウンドインスタレーション/speaking instruments and listening robots》 Mike Sekine
作家は多様な環境で多様な言語とともに時間を過ごした経験を持つ。そこで得た洞察をもとに、声を出すこと・音を聴くことに関する作品を制作・発表する。ブースでは息を吹きかけて音を出す独自の楽器を展示していた。実際の音を聞くことはできなかったが、大変に興味深い取り組みだ。
《『鎖に繋がれた犬のダイナミクス』海外発表》 藤堂 高行
人に襲いかかろうとする猛犬型の自律口ボットを、鎖に拘束した不自由な状態で、観客の前でデモンストレーションを行った。その様子を映像で紹介する。観客はロボットの攻撃が届かない安全な距離を保ちながら、その〈殺意の視線〉と対峙する。たった1本の〈倫理の鎖〉によってかろうじてコントロール下にある人工の猛獣を我々はどう受け止めたらいいのか。
《こだまはこだまにこだまする》 冬木 遼太郎
1905年の日露戦争終結時、サハリンに設置された国境標石のレプリカをもとにオブジェクト(レプリカのレプリカ)を作り、自律的に動き回らせる。国境策定という制度が現実の空間を分断する構造を、物理的かつ感性的に可視化し、システムと現実の齟齬、そして「複製」というオーセンティックな美術的手法が持つ新たな可能性を探る。作者の意図は理解できるし、作品コンセプトも興味深い。しかし、国境策定という国家主権の根幹のひとつを、今回のような手法で見せるのは、見た人によっては国境の重要性について誤ったメッセージを受け取ってしまうのではないかと気になった。
開催概要
会期:2026年2月28日(土)〜3月8日(日)
時間:11:00 ~18:00(最終入場 17:30)※ 2月28日(土)、3月6日(金)、7日(土)のみ 11:00 ~19:00(最終入場 18:30)
会場:TODA HALL & CONFERENCE TOKYO(東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 4階)
入場料:無料
主催:文化庁
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