アート / ライフ / 工芸

Posted on 2021-11-04
【レビュー】民藝を実践的な活動として捉え直す 柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」



 


時間軸を縦糸に、10の主題を横糸に展示構成
東京・竹橋の東京国立近代美術館で柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」が開催中です。

「民藝」とは、今からおよそ100年前の1925年に、柳宗悦、濱田庄司、河井寬次郎によって作られた新しい美の概念です。

彼らは一般の民衆が使う日常の生活道具の中に、美術とは異なる手仕事の美しさを発見し、それを通して生活や社会を、美的に変革していこうとしました。

今回の展覧会は、陶磁器、染織、木工などの暮らしの道具類や大津絵といった民画とともに、出版物や写真などの同時代資料も展示し、民藝の活動の軌跡と、民藝の可能性を考えていきます。

展覧会の構成は、緩やかに時間軸に沿って展開する以下の6章で組み立てられています。

第1章 「民藝」前夜-あつめる、つなぐ 1910年代~1920年代初頭
第2章 移動する身体-「民藝」の発見 1910年代後半~1920年代
第3章 「民」なる趣味-都市/郷土 1920年代~1930年代
第4章 民藝は「編集」する 1930年代~1940年代
第5章 ローカル/ナショナル/インターナショナル 1930年代~1940年代
第6章 戦後をデザインする-衣食住から景観保存まで 1950年代~1970年代

民藝運動の歴史は、直線的な発展という形では捉え難いものです。

民藝運動のダイナミズムは、同じ「主題」が時代を超えて繰り返し登場することで生まれてきたともいえます。

展示は、上記の第1章から第6章までの時間軸に沿った章立てを縦糸とし、以下の10の「主題」を横糸として、これらのマトリックスを意識した構成となっています。

横糸となる「主題」は以下の通りです。

1 発見と蒐集
2 異文化との出会い
3 都市と地方
4 手仕事と産業、ギルド
5 観光・交通
6 建築から景観まで
7 展示する
8 ネットワークをつくる
9 売る/買う
10 「日本」を見せるーーローカル/ナショナル/インターナショナル
 
  
柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」
会期 2021年(令和三年)10月26日(火)から2022年(令和四年)2月13日(日)まで ※会期中に一部展示替えあり
開館時間 午前10時から午後5時まで(金・土曜日は午前10時から午後8時まで) ※入館は閉館30分前まで
会場 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー、2Fギャラリー4
休館日 月曜日(ただし2022年1月10日(月・祝)は開館)、年末年始(12月28日(火)~2022年1月1日(土・祝))、1月11日(火)
観覧料 一般1800円(1600円)、大学生1200円(1000円)、高校生700円(500円)、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)も観覧できます。
 
以下は10月25日に行われた記者内見会で撮影したものです。

『白樺』第1巻第8号[ロダン特集]1910年11月 日本民藝館
志賀直哉や武者小路実篤ら学習院出身者が中心となって、文芸雑誌『白樺』が1910年に創刊された。当時、学習院高等学科在学中の柳宗悦は、最年少の同人として参加した。『白樺』同人たちは、彫刻家ロダンへの熱狂的な関心を示し、『白樺』でもロダン特集が組まれた 


 

木喰五行(もくじきごぎょう)《地蔵菩薩像》  1801年 日本民藝館
柳宗悦は1924年、山梨県甲府の旧家で、江戸時代後期に木喰上人が彫った仏像に偶然出会った。仏像の表情に魅了された柳はその後数年間、日本中を巡り木喰仏についての調査研究を行った


 

民藝運動の三本の柱「美術館」「出版」「流通」を示した図(民藝樹 『月刊民藝』創刊号)
民藝運動の三本の柱「美術館」「出版」「流通」を示した図。美術館とは工芸品の蒐集、展示を担う日本民藝館。出版は機関紙『工藝』や『月刊民藝』など。流通は民藝品を販売するセレクトショップ。これら自前のメディアを持っていたことが、民藝運動の強みであった 


 

《日本民藝地図(現在之日本民藝)》 芹沢銈介 1941年 日本民藝館
全長13メートルを超える巨大な地図。旧国名による区分に、都道府県の境界を重ねる。いわば近世と現代とがオーバーラップされた地図だ。そこに簡略化した鉄道網を走らせ、和紙、民窯、竹細工、染織など25種類の絵記号を使って、500件を超える産地が登録されている 


 

会場に特設された柳宗悦の書斎コーナー
机は木漆家 黒田辰秋作による拭漆、椅子は獅子飾りが付いたアメリカのアンティークである 


机:拭漆机 黒田辰秋 1930年 日本民藝館
椅子:獅子飾付椅子 アメリカ 19世紀 日本民藝館
 

特設ショップには、D&DEPARTMENTが出店。また全国の民藝を扱うショップから全4店舗が2週ごとにポップアップ・ストアに出店。各地の民芸品が購入できる


 
        
     




Posted in アート, ライフ, 工芸 | Comments Closed

Related Posts