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Posted on 2025-04-05
フランドル絵画 名作10選


フランドルとは、今のベルギー西部を中心として、オランダ南西部、フランス北東部にまたがる地域である。

この地は中世から現代にかけて、著名な画家を多数輩出した。

絵画様式は、北方ルネサンス、バロック、ネオクラシシズム、象徴主義、現代美術へと発展していった。


《メロードの祭壇画》Mérode Altarpiece ロベルト・カンピン(1425年~1428年頃)

本作は、教会や修道院からの依頼ではなく、個人の注文によって描かれたと考えられている。

左翼パネルで、従者の男性の後ろで跪いている女性が、この作品の依頼主である。

当時、個人的依頼の場合、依頼主を作品の中に描き込むことは普通にあった。

中央パネルのモチーフは受胎告知だ。

聖母マリアは書物に目を落としたままで、来臨した天使に気付いていない。

このことから、神の子の受胎を告げられる直前の場面を描いたものであることが分かる。

マリアの前のテーブルに置かれた書物は旧約・新約聖書の象徴である。

書物の横には陶器の花瓶にユリがいけられている。ユリはマリアの純潔を表す。

右翼パネルはマリアの夫、聖ヨセフが描かれている。

聖ヨセフは大工姿である。

ヨセフはワイン作りに使用する道具を作っている。

これはキリストの血であるワインと受難を意味している。

窓の外には、ねずみ捕りがある。

ねずみ捕りはキリストが将来捕縛されること、そして悪魔の誘惑を退けることの象徴だ。


《アルノルフィーニ夫妻の肖像》The Arnolfini Portrait ヤン・ファン・エイク(1434年)

ジョヴァンニ・ディ・ニコラオ・アルノルフィーニ夫妻を描いたものだ。

アルノルフィーニは1400年頃に生まれ、1452年以降に亡くなっている。

アルノルフィーニ家は、イタリアのトスカーナ州ルッカの有力な一族で、都市の政治と貿易に携わり、高価な織物を扱っていた。

アルノルフィーニは人生の大半を当時ブルゴーニュ公国の一部であったフランドルで過ごした。

ブルゴーニュ公国の主要都市のひとつつであるブルージュを拠点に活動していたとみられる。

この絵が描かれた場所は、フランドルにあった夫妻の邸宅だとされている。

夫妻とも豪奢な衣装を身に着けているが目を引く。

季節は夏であるにもかかわらず、夫はタバード(袖なし、あるいは袖の短いショートコート)を着ており、妻は厚いドレス姿で、毛皮で縁飾りが施されている。

縁飾りに注目すると、夫はクロテンの毛皮、妻はシロテンの毛皮で、どちらも非常に高価なものである。

夫が着用しているタバードだが、経年変化で退色してしまった現在の色よりも紫に近い色で、シルクベルベッドのような高価な素材だと考えられている。

頭に被っているのは黒い色に染めた麦藁帽子である。

妻のドレスの袖には、手の込んだ飾りが施されている。ドレスの下に着ている青い服にも白い毛皮で縁取りがされている。

こうした非常に高価な服装が揃えられたのも、一家が高価な織物を扱う貿易商を営んでいたからであろう。


《快楽の園》The Garden of Earthly Delights ヒエロニムス・ボス(1503年~1504年 ※他説あり)

ボスの作品の中でも、最も有名なひとつであるといっていいだろう。

この作品は、画家としての最盛期にあったときに描かれた。

これほどまでに複雑な寓意に満ち、生き生きとした表現で描かれている作品は他に存在しないといわれる。

左パネルは、地上の楽園あるいはエデンの園を描いたものだ。

キリストの姿をした神が、アダムにイヴをめあわせる様子が描かれる。

周囲には多くの動物がいて、画面の色調は明るく、穏やかな雰囲気だ。

中央パネルには、多数の裸体の男女が描かれている。

現世の快楽もしくは性的快楽を表現していると考えられている。

ほかには、空想上の動物、巨大な果物、奇妙な形の構造物などが描かれる。

右パネルは、悪魔が人間を苦しめ責める地獄を描いた場面だ。

拷問器具が見られる。

多種多様な化け物も見られ、怪奇幻想画家ボスの本領が発揮されている。

ボスは非常に個性的な画家で、類まれな空想的作風であったため、同時代における影響力は弱かった。

しかし後世になると、ボスの魅力が評価されていくようになった。


《キリスト昇架》The Elevation of the Cross ピーテル・パウル・ルーベンス(1610年~1611年)

中央パネル、左翼パネル、右翼パネルの3部分から構成される三連祭壇画である。

中央パネルでは、死刑執行人の男たちが、イエスが釘で打ち付けられている十字架を立ち上げようとしている。

執行人たちは異様なほど筋肉を隆々とさせている。

左翼パネルでは、女性や子どもたちが悲嘆に暮れている。

手前の女性はからだを大きくのけ反らせ、幼い子どもが彼女にしがみついている。

その上の老婆は目を大きく見開き、イエスを見つめる。

後方に立っているのは、聖母マリアと洗礼者ヨハネのふたりだ。事の成り行きを見守っているように見える。

右翼パネルでは、たてがみをなびかせた馬にまたがったローマ軍の司令官が、イエスを磔刑に処するように指示を出している。

その後では、キリストとともに磔刑を受けることになっているふたりの泥棒の姿が描かれている。

ひとりすでに十字架にかけられ、地面に横たわる。

もうひとりは着ている服を脱がされている。

ルーベンスは本作を完成させるとほどなくして、「キリスト降架」の制作に取りかかった。

なお、イギリスの小説家ウィーダによる児童文学「フランダースの犬」の主人公ネロは、フランドル地方アントウェルペンで暮らしていた。

ネロは貧困や人々からの誤解に苦しみ、ついに人生を絶望し、かねてより一目見たかった本作と「キリスト降下」が飾られている大聖堂に、極寒の風吹のなか、愛犬パトラッシュともに向かう。

そしてついに最期の力を振り絞って作品を見ることができるが、寒さのため、絵の前でパトラッシュとともに息を引きとってしまう。


《チャールズ1世騎馬像》Equestrian Portrait of Charles I アンソニー・ヴァン・ダイク(1637年~1638年)

アンソニー・ヴァン・ダイクはフランドル出身で、イタリア、イギリスで活躍し、イングランド国王の首席画家にまで上り詰めた。

ヴァン・ダイクは、チャールズ1世の肖像画を複数枚描いている

この作品は、力強い馬の手綱を握るチャールズ1世の姿を描くことで、国家を指揮する国王としての力を表現している。


《王様が飲む》The King Drinks または《豆の王様》The Bean King ヤーコプ・ヨルダーンス(1638年頃)

クリスマスから数えて12日目の1月6日は、イエス誕生を祝う公現祭と呼ばれる。

その前夜、賑やかに楽しむ人々を描いたのが本作である。

手作りパイがふるまわれ、その中に隠されたひとつの豆に運よく当たった者はその夜、「豆の王様」としてのもてなしを受けるというフランドルの祭が描かれている。

豆はマギたちをイエスのもとに導いてきた星を象徴する。


《酒を飲む王様》ダフィット・テニールス(子)(1634年~1640年頃)

ダフィット・テニールス(子)はフランドルの画家であり、1610年アントウェルペン(現在のベルギー第二の都市)で生まれた。

農民の野外での祭りや祝賀の様子、酒屋や台所の風景など大衆的な題材を多く描いた。

本作は、ヤーコプ・ヨルダーンス《王様が飲む》と同様の主題である。


《仮面に囲まれた自画像》ジェームズ・アンソール

ジェームズ・アンソールは1860年に、ベルギーに生まれた。

19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍し、近代ベルギーを代表する画家のひとりだ。

表現主義(感情を作品中に反映させて表現すること)の先駆けとされる。


《Niobe》コンスタント・ペルメーケ

コンスタント・ペルメーケは、1886年に生まれたベルギーの画家、彫刻家であり、フランドル表現主義の第一人者とみなされている。1952年に亡くなった。

本作は、孤立した人間を表現している。


《リエージュの壁画「創世記」》 ポール・デルヴォー(1960年)

ポール・デルヴォーは1897年にベルギーに生まれ、1994年に亡くなった。

16世紀のマニエリスム(遠近法・明暗法の抽象化、歪められた空間など)のような女性像や、独自の夢とノスタルジーの世界を描く。

デルヴォーは、静寂の中に幻想的な世界が広がるその作風によって「幻想画家」という呼び方もされる。

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