アート

Posted on 2011-10-20
アートとテクノロジーの融合を目指したモホイ=ナジ 日本初の本格的回顧展


Writer:蓬田(よも)修一

千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館において「視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション」展が、2011年9月17日(土)~12月11日(日)、開催されています。

モホイ=ナジ・ラースロー(1895~1946)は、レオナルド・ダ・ヴィンチにも匹敵する多彩な仕事を展開し、20世紀美術に新しいヴィジョンをもたらしたハンガリー出身の芸術家です。

あらゆる視覚芸術のジャンルを横断しながら「アートとテクノロジーの融合」を目指して実験を繰り返し、「光と運動による造形」を生み出したモホイ=ナジは、ドイツの総合芸術学校バウハウスで教鞭をとるなど、教育者としても知られています。

本展は、多数の貴重な初公開作品を含む遺族のコレクションを中心に、ハンガリー時代の素描や構成主義作品、代表作となるキネティック彫刻《ライト・スペース・モデュレータ》、カメラを使わない写真“フォトグラム”、アメリカ時代のカラフルな絵画など、国内外から集められた約270点によってモホイ=ナジの全貌を明らかにする、日本で最初の本格的な回顧展です。

代表作《ライト・スペース・モデュレータ》
現代メディア・アートの萌芽

創造活動は幅広い分野に及びましたが、モホイ=ナジが生涯にわたって取り組んだのは、アートとテクノロジーを融合させ、新たなヴィジョン(視覚)をもたらす「光と運動による造形」を実現することでした。

光を透過・反射する新素材のプラスティックや金属を用いたり、カメラを使わずに、印画紙と光源の間に被写体を置いて感光させる写真「フォトグラム」の実験を繰り返したりしたほか、映画製作や舞台美術の仕事を通じても、光・運動・空間の関係性を探究しています。

なかでも、8年にわたる構想の末に完成させた、機械仕掛けで動く彫刻《ライト・スペース・モデュレータ》は、モホイ=ナジの造形思想を色濃く反映した代表作です。

モホイ=ナジが本作に取り組んだ1920-30年代、安定して供給される電気は人々の生活を変え、その心を明るく照らし出しました。彼らの驚きや喜びは、どれほど大きかったことでしょう。

もちろん、電気の恩恵によって生まれる「光」と「運動」をいち早く芸術作品の重要な構成要素にした、モホイ=ナジの革新性も見逃せません。

電気のある生活が当たり前でなくなり、その効力や役割について考えることの多い今こそ、かつて本作が世間に与えたインパクトを振り返りつつ、現代のメディア・アートの萌芽をそこに見出すことができるのではないでしょうか。

《ライト・スペース・モデュレータ》は、開館時間中、30分毎に約2分間、稼働させます。

作品が回転しながら表情を変えゆくさまと光の戯れを鑑賞することができます。

展覧会概要

会  期: 2011年9月17日(土)-12月11日(日)
開館時間: 9:30-17:00(入館は16:30まで)
休 館 日 : 月曜日[9/19と10/10は開館]、10/11(火)
入 館 料 : 一般1,200円(1,000円)/学生・65歳以上1,000円(800円)/小中学生・高校生500円(400円) ※( )内は20名以上の団体料金
会  場: DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631番地)

DIC川村記念美術館 オフィシャルサイト


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