アート

Posted on 2016-07-02
現代を代表する写真家トーマス・ルフ 日本初の本格回顧展




一見ありふれた証明写真のようにも見えるポートレート。しかし巨大なサイズ(210×165cm)に引伸ばされた作品の前に立つと、そうした印象は一変する。ありふれた人物写真がどこか不可解で不可思議な存在にすら見えてくるとすれば、そこには「写真」というメディア独自のメカニズムが働いているのではないだろうか。
トーマス・ルフ
《Porträt (P. Stadtbäumer)》
1988年
C-print 210×165cm
©Thomas Ruff VG Bild-Kunst, Bonn 2016


東京と金沢で開催
現代の写真表現をリードしてきたトーマス・ルフの回顧展が、2016年(平成28年)8月30日(火)から11月13日(日)まで東京・竹橋の東京国立近代美術館で、また2016年(平成28年)12月10日(土)から2017年(平成29年)3月12日(日)までは石川県・金沢市の金沢21世紀美術館で開催されます。

トーマス・ルフは1958年、ドイツのツェル・アム・ハルマースバッハで生まれました。77年から85年までデュッセルドルフ芸術アカデミーで、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻のもとで写真を学びます。

その後、ドイツ人家庭の典型的な室内風景を撮り続けた「Interieurs(室内)」シリーズを皮切りに、友人たちの肖像を巨大なサイズに引き伸ばした「Porträts(ポートレート)」で大きな注目を集めました。

以来、建築、都市風景、ヌード、天体などさまざまなテーマで作品を制作し、明確なコンセプトにもとずいたシリーズとして展開しています。

1990年代以降は写真作品にデジタル処理を導入するとともに、インターネット上に氾濫する画像にマニピュレーションを加えた「nudes」「jpeg」シリーズ、また探査機がとらえた火星などの天文写真に加工を施す「cassini」「ma.r.s.」など、他者が撮影した写真を素材としてイメージそのものの再構築を試みます。

このようにルフは一貫して写真というメディアの特性である“情報性”と“表現性”への検証を通じて、私たちが抱いている写真に対する既成概念に揺さぶりをかけ続けてきました。

また、教育者としても2000年にデュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任し、2006年まで教鞭をとりました。ルフは世界が今、注目する写真家のひとりであり、現代ドイツを代表する写真家です。

初期作品から未公開の最新作まで一挙紹介
今回の「トーマス・ルフ展」は、彼の初期作品から最新作までを紹介します。初期作品である「Interieurs」、評価を高めた「Porträts」、少年時代からの宇宙への関心を背景とする「cassini」や「ma.r.s.」、インターネット時代の視覚・情報空間を問う「nudes」や「jpeg」など全18シリーズ、東京会場約125点、金沢会場約160点の作品で構成されます。

最新作「press++」シリーズは、ある新聞社のプレス写真アーカイヴを入手したことから着想された作品です。今回の展覧会では、読売新聞社から提供されたプレス写真を素材とした、世界初公開となる作品も発表されます。

ルフ作品は日本でも1990年代から美術館やギャラリーで紹介されてきましたが、美術館で開催される本格的な回顧展は今回が初となります。待望されていた日本国内での個展です。

トーマス・ルフ展
東京会場
会期 
 2016年(平成28年)8月30日(火)から11月13日(日)まで
休館日 月曜休館。ただし9月19日、10月10日は開館し、9月20日(火)、10月11日(火)は休館。
会場 東京国立近代美術館
観覧料 一般1600円(1400円/1300円)、大学生1200円(1000円/900円)、高校生800円(600円/500円)、中学生以下無料
※( )内は前売/20人以上の団体料金。

金沢会場
会期 
 2016年(平成28年)12月10日(土)から2017年(平成29年)3月12日(日)まで
休館日 月曜休館。ただし1月2日は開館し、1月10日(火)は休館。12月29日から2017年(平成29年)1月1日までは休館
会場 金沢21世紀美術館
観覧料 一般1000円(800円)、大学生800円(600円)、小・中・高生400円(300円)
※( )内は前売および20人以上の団体料金。

ルフは少年時代から一貫して宇宙への関心を抱き続けてきた。2008年に発表された「cassini」は、NASA(アメリカ航空宇宙局)などが1997年に打ち上げた宇宙探査船cassiniが撮影した土星とその衛星の画像を素材にした作品。ときに抽象的、幾何学的なデザインのようにも見える作品のイメージは、インターネット上で公開されている画像の色彩やトーンを操作することで生み出された。
トーマス・ルフ
《cassini 10》
2009年
C-print 98.5×108.5cm
©Thomas Ruff VG Bild-Kunst, Bonn 2016

シリーズタイトルとなっている「フォトグラム」とは、1920年代後半にモホイ=ナジ・ラースローらによって開発された写真技法のひとつ。カメラを用いず感光紙上に物体を置いて直接露光し、その影や透過する光をかたちとして定着させる技法。ルフは2012年よりこの技法を用いた作品制作に取り組み始めた。従来のフォトグラムではやり直しがきかず、モノクロームの表現に限定されるのに対して、作品制作にデジタル技術によるマニピュレーションを導入していたルフは、コンピューター上のヴァーチャルな「暗室」で、物体の配置と彩色を自在に操作し像を作り上げている。
トーマス・ルフ
《phg.12》
2015年
C-print 185×310cm
©Thomas Ruff VG Bild-Kunst, Bonn 2016

インターネット上に溢れる、もはや計測することすら不可能な量の画像は、何らかの現実を表象しうるのだろうか。それとも単にRGB3色の画素の組み合わせが作る視覚的な刺激に過ぎないと言えるのだろうか。ルフは、ネット上にある日本の漫画やアニメから取り込んだ画像に、原形が分からなくなるまでデジタル加工を繰り返し、画像から意味や情報を剥ぎ取り、「イメージ」の解体へと踏み込んでいる。
トーマス・ルフ
《Substrat 31 III》
2007年
C-print 186×268cm
©Thomas Ruff VG Bild-Kunst, Bonn 2016


※本記事に掲載されている作品画像のコピーや転載はご遠慮ください。




展覧会場 Photo Review
以下は2016年8月29日に行われたプレス内覧会にて撮影したものです。

今回の展示会開幕にあわせて、トーマス・ルフ氏が来日しました。

自身の作品とツーショット。

両手を挙げるポーズの意味を聞きそびれました。残念。

フォトセッション会場はプレスで大混雑でした。他社のカメラの間から撮影。

開会式で挨拶をするルフ氏。

記者会見の模様。

展示会場エントランス。

会場構成は「ポートレート」から始まります。

抽象絵画のように見えるこれらの作品は、日本のアダルト画像をもとに、合成などの画像処理を幾重にも施して制作したものです。

画面左にある入口の向こう側は「ヌード」の作品が展示されています。

展示作品は基本的に撮影可能です。(撮影した画像の使用にあたっては注意事項があります)

会場出口付近に、ショップが特設。展覧会にあわせた特別グッズが盛り沢山です。

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開催を記念して、国立新美術館で使うことができる「トーマス・ルフ展」の招待券を、Media & Communication読者の5組10名様にプレゼントいたします。

以下のフォームより、お名前、メールアドレス、ご住所をお書きになり、ご応募ください。

締め切りは、2016年(平成28年)8月29日24時です。

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