アート / コラム

Posted on 2024-04-15
初心者の西洋絵画 旧約聖書「ノアの箱舟」


神は万物を地上から消し去ろうと決意

人が地上に増えてくると、悪がはびこってきました。悪いことをしても反省しません。

神はこうした状況をご覧になると、人を創造したことを悔やみ始めます。

そして、とうとう人を地上から消し去ろうと決意します。さらには、人だけでなく、動物、鳥、創造したものすべてを滅ぼそうと決めました。

ところが、ノアとその家族だけは例外でした。ノアは信仰心の深い人だっかたからです。

神はノアに向かってこう言います。

「わしは大洪水を起こし、創造したすべてのものを滅ぼそうと決意した。お前は箱舟を作りなさい。そしてその中に、家族とともに入りなさい。それから、すべての生き物のつがいも箱船に入れて、大洪水のあとも生き残れるようにしなさい」

ノアは神の仰せのとおり箱船を作り、地上の生き物たちのつがいとともに箱船に乗り込みました。

神は、大雨を四十日四十夜降らせ、大洪水を起こし、地上のすべての生き物を滅ぼしてしまったのです。

ただ、箱船に乗ったノアの家族と動物たちだけは無事でした。

 

鳩とオリーブ

大雨が始まってから百五十日目、ようやく洪水が止みました。

洪水の間、水上を漂っていたノアたちが乗った箱船は、アララト山の頂に止まりました。

大雨がやみ、洪水が収まり、大地をおおっていた水位がだんだんと下がっていきます。

ノアは箱船の窓を開いて、そこから鳥と鳩を空に放ちました。

すると、鳥も鳩も少し飛んだだけで箱船に戻ってきてしまいました。箱船の回りは水だらけで止まるところがなかったからです。

それから七日たったとき、鳩を空に放ちました。今度は遠くへ向かって飛んでいきました。

夕方、鳩は箱船に戻って来ました。くちばしにはオリーブの若葉をくわえていました。大地から水が引き、植物が育ってきたからです。

聖書をテーマにした絵画に、よく鳩とオリーブが描かれていますが、これが出典でしょうね。

 

有名映画もノアの箱舟から引用!?

中国人映画監督ジョン・ウーは、作品の中に白い鳩を登場させます。「ミッション:インポッシブル2」でも、白い鳩を印象的に登場させました。彼の演出も、聖書のこの場面を引用しているかもしれません。

映画の話ついでに、「007ムーンレイカー」にもノアの箱船を引用したシーンが出てきます。

人類の毒ガス抹殺を企てるドラックスは、選んだ男女の若いカップル(「ドラック・チルドレン」と呼ばれている)をシャトルに乗り込みませ、宇宙ステーションに避難させます。

このシャトルがノアの箱舟ですね。人類滅亡後に、ドラックス・チルドレンによって新たな世界を創造させようという魂胆でした。

ドラックス・チルドレンは、みんな白い服装で、男性は体操選手みたいなぴったりした服、女性は白いミニスカート姿。

どのカップルもシャトルの中で、手をつないでいちゃいています。“選ばれた人類”というよりは、頭の悪い若者というイメージだったのがとても印象的でした。

話を戻しまして、それからまた七日たったとき、再び鳩を放ちました。今度は鳩は戻ってきませんでした。大地が乾いて、鳩が大地に留まることができたからです。

ノアは船に乗り込ませた家族や動物たちとともに下船します。祭壇を築いて、連れてきた動物の中から神のためにいけにえを捧げました。

神はお喜びになり、もう二度と生き物を滅ぼさないと誓ったのです。新たな世界の始まりでした。

 

ミケランジェロが描いた《洪水》

システィーナ礼拝堂の天上画の一部です。描いたのは、ミケランジェロ。

大洪水で、あたり一面が水に呑み込まれています。

中央には小さなボートにたくさんの人が乗り、避難しようとしています。

これからボードに乗り込もうとしている人がいて、ボートが大きく傾いています。定員オーバーで、いまにも転覆しそうです。怖い!

左側は、命からがら身一つで、まだ沈んでいない土地に避難してきた人たちです。

ほとんどの人が裸です。何人かは食料らしいものが入った大きな袋を担いでいますね。

右側は、建築物の一部か岩山のてっぺんのような場所に、大勢の人がひしめいている様子です。

水はすぐそこまで来ています。怖いです!

 

ギルガメッシュ叙事詩のパクリ?!

実は、古代メソポタミアの文学作品『ギルガメシュ叙事詩』に、ノアの箱船とほぼ同じエピソードがあります。

旧約聖書のノアの箱船のエピソードは、『ギルガメッシュ叙事詩』に影響を受けて書かれたのではないかと言われています。

※間違い、解釈の違いなどありましたらご指摘ください。

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