アート / コラム
Posted on 2025-02-24
冬の絵画 ピーテル・ブリューゲル《鳥罠のある冬景色》
この作品は、《バベルの塔》などの傑作を残したブランバント公国(今のベルギーとオランダにまたがる地域)の巨匠、ピーテル・ブリューゲルの手によるものだ。
ブリューゲルには息子がいて、名前は父親と同じピーテル・ブリューゲルという。
しかもやっかいなことに息子も画家である。さらにやっかいなことには、息子は父親の作品を何百点も模写している。
現代だったら贋作作家と言われかねないが、模写作品も芸術作品としての評価が与えられ、美術館に収蔵されている。
この作品は《鳥罠のある冬景色》という名前が付いている。
場所はフランドルの農村だ。川が凍り、子どもが独楽回しやスケートに興じている。
氷に穴をあけて魚を取っている人もいる。
画面の右半分は、地面に雪が積もっている。そこには鳥を捕るための板の罠が仕掛けられているのが見える。罠の周囲に鳥が集まっている。ここから作品タイトルが付けられた。
目を画面左側の凍った川に戻して下のほうを見ると、氷に大きな穴が開いている。
スケートに興じている人々は、よく気を付けていないと氷の穴に落ちてしまう。
ブリューゲルは、人間も鳥と同じように、知らないうちに罠に捉えられる運命にあることを示唆している。
さて、ここで紹介した《鳥罠のある冬景色》は、父親の作品か、息子の作品なのか。
これは父親の作品である。この作品は人気があったらしく、息子の工房で100点以上の模写作品が制作された。
M&C編集部 蓬田修一
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