アート / コラム
Posted on 2024-05-17
初心者の西洋美術 旧約聖書 「アブラハム」
息子を神の生け贄にする
アブラハムという老人がいました。百歳という超高齢です。妻のサラも九十歳。
こんな超高齢夫婦に、神のお告げによって子どもが授かりました。
アブラハムは信仰に厚い人だったので、神はアブラハム夫妻に念願の子どもを授けたのです。
授かったのは男の子で、イサクと名付けられました。両親は彼を大切に育てます。
彼が少年になったときです。神はアブラハムにこう告げました。
「イサクを連れて山に行き、生け贄(いけにえ)としてイサクをわたしに捧げなさい」
アブラハムは神のお告げに従います。翌朝、一頭のロバとふたりの若者の従者、そしてイサクとともに山へ向かいました。
アブラハムは、生け贄を捧げるときに燃やすたきぎを、イサクに背負わせていました。
イサクは父親に質問します。
「お父さん、たきぎはありますが、生け贄のための羊はどこにあるのでしょう?」
イサクは自分が焼かれるのを知らなかったのです。
イサクの質問に対して、アブラハムはこう答えます。
「神が生け贄の羊を用意してくださるのだ」
ふたりは、ついに目的地の山の上に着きました。
アブラハムはそこに祭壇を築き、たきぎを並べます。
そして息子イサクを縛って、たきぎの上に寝かせました。
このあたり、聖書にはイサクは抵抗したとか、「お父さん、やめてください!」と言ったとかは書いてありません。素直に従ったようです。
「信仰の父」アブラハム
アブラハムは持ってきた刀でイサクを殺そうとしたそのとき、神の使いが天から呼びかけます。
「アブラハム、アブラハム」
使いはこう言います。
「その子を殺してはならない。あなたは神を畏れているのがよく分かった。自分のひとり息子さえ、捧げてくれたのだから」
そして、アブラハムに一頭の羊を与えます。
アブラハムはイサクをたきぎの上から降ろし、その羊を生け贄として捧げました。
神の使いはこう告げます。
「あなたはひとり息子でさえおしまないで神に捧げてくれた。だからあなたを大いに祝福します。あなたの子孫を、空の星、海辺の砂のようにたくさん増やしましょう。あなたの子孫は敵との戦いでも勝利を勝ち取るのです」
このエピソードから「主の山の上に備えあり」という言葉が語り伝えられるようになりました。
アブラハムは、彼の神への絶対的な信頼と服従から、キリスト教徒の間では「信仰の父」と呼ばれています。
レンブラント《イサクの犠牲》
エルミタージュ美術館所蔵の作品。レンブラントを代表する宗教画のひとつです。
愛する息子ののど元を刀でかき切ろうとする瞬間、神の使いが舞い降りて、アブラハムの手を止めます。
アブラハムの手から落ちた刀が、臨場感を伝えます。
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