アート

Posted on 2017-01-12
「TOKYO 書 2017 公募団体の今」 東京都美術展の大空間に大作が展示





 

新年には、美術館やギャラリーで書の展覧会が多数開かれています。東京・上野公園の東京都美術展で開催中の「TOKYO 書 2017 公募団体の今」は、その中でも最大級規模の展覧会です。

同展は、主に東京に基盤を置く18団体、合計38作家が参加、65作品が展示されてます。出品ジャンルは漢字、かな、大字書(小字数書)、前衛書(墨象)、近代詩文(調和体)、篆刻など多彩なのが特徴です。

ひとりの作家が10メートルの壁面を使い、各人新作を1点以上展示します。東京都美術展ならではの大空間に展示される大作には迫力があります。

書の展覧会をいかに楽しむか

書の展覧会に行ったとき「何が書いてあるのか分からない」と悩む人は多いと思います。そのため、書に関心はあるものの、展覧会に行っても十分に楽しめないケースも少なくないようです。

確かに、展示作品の中には何が書いてあるか「判読」するのが難しい作品も多いです。私も書の展覧会を見始めた頃、何が書いてあるのか分からず、作品の前で悶々とした気持ちになったことがありました。

そこで私が試みたのは、書かれている字の「造形」を楽しむという鑑賞の仕方です。字の形や大きさ、墨のかすれ具合、字の配置やバランスなどを、絵画のように楽しむという方法です。

こうした見方を続けていくと、書かれている意味にとらわれずに、文字の持つパワーを自分なりに感じることができるようになりました。

とは言え、何が書いてあるか分かったほうが鑑賞の楽しみ方は増します。そこで、私は書の展覧会に行くたびに、中国と日本の書の歴史や、書体(楷書、行書、草書、篆書、隷書など)、中国の古代思想といったことを、少しずつ自分なりに勉強していきました。書の勉強を通じて、古代から現代にわたる中国や日本の歴史も学ぶことができ、一石二鳥でした。

鑑賞者が自分なりに少しずつ書の勉強をしながら作品を鑑賞するという方法は、時間はかかりますが、とてもいいと思います。書はそうした方法で楽しむのに値する、懐の深い芸術だと思います。

今回の「TOKYO書2017」では、出品作家によるアーティストトークなどの関連イベントが行われます。こうしたイベントに参加して、作家の作品に対する思いや、作品を作るときの苦労話などについて聞くのも、作品についての鑑賞力を深めるには有効です。

書の作品は、中国や日本の古典の一節を書くことが多いので、日頃から古典に親しんでおくのがいいですし、本来は小中高校において、古文や漢文の授業を増やすことが望ましいのですが、現状それは困難です。書の展覧会などで古典に接したら、少しずつ古典作品をひもといていくのがいいと思います。

書はアート作品として楽しむのもいいし、歴史を踏まえて鑑賞するのも楽しいものです。鑑賞者が自分なりに書の作品が楽しめるようになるといいと思います。

TOKYO 書 2017 公募団体の今
会期
 2017年(平成29年)1月4日(水)から1月15日(日)まで
会場 東京都美術館 公募展示室 ロビー階第1・第2
観覧料 一般500円、65歳以上300円、団体券400円
※団体割引の対象は20名以上




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