アート

Posted on 2021-09-30
【レビュー】世界最大のゴッホ個人収集家のコレクション



展覧会場エントランス


ゴッホの評価が定まらないときからコレクション開始
東京都美術館で「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が開催中です(会期:2021年9月18日~12月12日)。

これまでいくつもの「ゴッホ展」が開催されてきましたが、今回の「ゴッホ展」がそれらと違うのは、ひとりの収集家が集めたゴッホコレクションを中心に紹介していることです。

その収集家の名前は、ヘレーネ・クレラー=ミュラー。

実業家である夫とともに、ファン・ゴッホがまだ現在のように評価されていない20世紀初頭からコレクションを始め、90点を超える油彩画と、約180点の素描・版画を収集しました。

個人のゴッホコレクションとしては、世界最大です。

今回の展覧会「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」は、このヘレーネのコレクションに焦点を当てたものです。

加えて、ファン・ゴッホ美術館からも油彩画4点が特別に展示されています。

わたくしなりに、展覧会の特色や見どころを、ご紹介したいと思います。

1 ゴッホの初期から晩年までの作風が一覧できる
ゴッホも初めからわたしたちがよく見る明るい雰囲気の作品を描いていたわけではありませんでした。

初期は、暗い雰囲気の作品が多いです。そののち、画業の研鑽を積み、いまわたしたちがイメージするような明るい雰囲気の作品へと変わっていきました。

会場には、初期から晩年までの作品が基本的に年代順に並んでいますので、ゴッホの作風がいかに変遷していったのかが一気につかめます。

2 素描が思いのほか魅力的!
ゴッホの素描と聞いても、一般にはピンと来ないかもしれません。わたくしもそうでした。

しかし、会場に並んだ素描を見てみると、ゴッホの画業の勉強のあとや、晩年の作品につながる要素が伺われたりと、大変に興味深く鑑賞できました。

3 コレクターについて考える機会
美術作品をコレクションというと、これまではお金持ちや特別な美術愛好家が行うものと思われてきましたが、最近は普通の人の間にも広まってきているように感じます。

会場には、どのようにしてコレクションを形成していったかに関する展示もあります。

それを見ると、コレクションを行おうと思っている人でも、思っていない人でも、美術品コレクションとはどういうものなのかを考えるよいきっかけになると思います。
(M&C編集部 蓬田修一)

展示構成
1 芸術に魅せられて:ヘレーネ・クレラー=ミュラー、収集家、クレラー=ミュラー美術館の創立者
2 ヘレーネの愛した芸術家たち:写実主義からキュビスムまで
3 ファン・ゴッホを収集する
 3-1 素描家ファン・ゴッホ、オランダ時代
 3-2 画家ファン・ゴッホ、オランダ時代
 3-3 画家ファン・ゴッホ、フランス時代
   3-3-1 パリ
   3-3-2 アルル
   3-3-3 サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ
4 ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション:オランダにあるもう一つの素晴らしいコレクション

ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
会場 東京都美術館 
会期 2021年(令和三年)9月18日(土)から12月12日(日)まで
休室日 月曜日
※ただし、11月8日(月)、11月22日(月)、11月29日(月)は開室
※日時指定予約制です。詳細は公式サイト(https://gogh-2021.jp)をご覧ください。
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

フィンセント・ファン・ゴッホ《砂地の木の根》1882年4-5月 鉛筆・黒チョーク・茶色と灰色の淡彩・不透明水彩、水彩紙 51.5×70.7cm クレラー=ミュラー美術館


 

LB階の「ヘレーネの愛した芸術家たち」エリア会場風景 

 
 

フィンセント・ファン・ゴッホ《黄色い家(通り)》1888年9月 油彩、カンヴァス 72×91.5cm ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)


 

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のプロヴァンスの田舎道》 1890年5月12-15日頃 油彩、カンヴァス 90.6×72cm クレラー=ミュラー美術館


 

特設ショップでは展覧会特製グッズを販売

 
   
        




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