アート / マーケティング

Posted on 2012-05-01
アートフェア東京2012、入場者数、出展者、会場規模など全て最高記録


 Writer:宮川由紀子

「アートフェア東京2012」エントランス。今回は展示ホールを全面使い、規模を拡大しての開催となった。

2012年3月29日から4月1日まで、東京国際フォーラムで開催された「アートフェア東京2012」のクロージングレポートがこのほど発表されました。

4日間の会期で、昨年度を23%上回る過去最高の延べ53,000人を超える人々が来場し、大盛況のうちに閉幕しました。

レポートならびに関係者のコメントを紹介します。

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7回目を迎えた今回は、国内外の22都市から164の出展者が参加及び協力し、古美術・工芸から、日本画、洋画、近・現代美術まで時代を越えた幅広いジャンルの作品を展示販売しました。

また、展示ホール全面を使用したフェアの開催、そしてプレス入場者数も前回を15%上回るなど全てにおいて最高記録を更新しました。

現代美術の実験的展示として昨年スタートした「アーティスティック・プラクティス」は今回拡充され、美術を軸にクリエィティビティを横断し、時代とジャンルを超えた優れた作品や様々なプロジェクトに出会える場となりました。

山下裕二氏をキュレトリアル・アドバイザーに迎えた特別展示「シャッフルⅡ」は、縄文土器から現代美術まで、日本の美術を辿りながら良品に出会える空間となりました。

また、海外では既に市場のある「コンテンポラリージュエリー」セクションの新設や震災後に生まれた新しいプロジェクトの紹介など「アーティスティック・プラクティス」の拡充は、フェア全体のクオリティ向上に貢献しました。

「アジアにおける東京」というビジョンのもと、森美術館館長の南條史生氏をキュレトリアル・アドバイザーに迎え新設された「ディスカバー・アジア」セクションには、ソウル、台北、北京などの東アジアの主要都市を拠点とする国際的に

高い評価を受けるギャラリーが出展し、世界的に活躍する日本のギャラリーやアジアの美術館と共に軒を連ねました。

そして開廊5年以内の若手現代アートギャラリーの特別セクション「PROJECTS」では、ブースにはおさまりきらない大型作品を選出し、展示する「project in PROJECTS」も新設され、東京、ソウル、メルボルン、台北、シンガポールから国際色豊かな作家の作品が出品されました。

メインスポンサーのドイツ銀行グループを始めとする多くの協賛/協力企業・団体の支援により実現した新セクションを開設することにより、展示のクオリティや国際性は向上し、トーク・シリーズやガイドツアーなどの関連イベント・プログラムも更に充実、そして「食」や「ファッション」などの他産業とのコラボレーションにも繋がり、東京のクリエィティブシーンを広く盛り上げました。

国内外164のギャラリーが出展。さまざまなアート作品が展示販売されている。ブースにはギャラリーの人がアテンドしているので、作品について詳しく聞くことができる。

出展者、関係者のコメント

■森美術館 館長 南條史生氏

今回のアートフェア東京は、よりグローバルに日本のアートマーケットを発信するための有効な手段となっていると実感しましが、さらに育って、海外のコレクターやメディアが、常に注目するアートフェアになってほしいと思っています。

特に、現在、一人勝ちとも言われる香港に対して、「現代と骨董の両方があります」という特徴だけでない差異化をどう演出するか、ということが重要だとおもいますのでそこを今後戦略的に強化していくといいですね。

また、今回の特別企画シャッフルll は、日本の古いものと新しいものがまさにシャッフルされていて興味深かったです。

この企画は、伝統と現代をつなぐという意味で、アートフェア全体のコンセプトを強化する意味があると思うので、本当は、会場の真ん中で、二つのギャラリー群の境目に置くと、より意味がはっきりしたのではないでしょうか。

若手の作家を見られるということに関しては、美術館の展覧会よりもごっちゃで、多量で、掘り出し物に行き当たるような感覚があり、大変おもしろいので、それを強化していくとより良いフェアになっていくと思います。

■明治学院大学教授/美術史家 シャッフルll キュレトリアル・アドバイザー 山下裕二氏

今回さまざまのジャンルがブースを出しているアートフェア東京で、すべての価値観をシャッフルするような展示を企画しました。

日本のアートフェアでしかできないような有意義な展示になり国内外の来場者に日本のすぐれた作品をしっかりアピールすることができたと思っています。

■ビタミン・クリエィティブ・スペース アーティスティック・ディレクター/アートフェア東京 アーティスティック・ネイバー フー・ファン氏

会場を拡大するなどフロア構成を一新した今年のアートフェア東京では、現代美術や古美術などが非常に良いバランスで、今まで以上に見やすい環境の中、展示販売されていて素晴らしかったと思います。

幅広いジャンルや時代のアートが一堂に会するのはアートフェア東京の際立った特徴ですが、アートフェアというプラットフォームを通して、美術を軸にバランス良く日本の歴史を学ぶことが出来る場を提供していたと感じました。

特に、若手のコレクターに対して様々な刺激を与えていたと思います。

彼らの情熱が今後のフェアを形成していくことを予感させるフェアであったとも思います。

■小山登美夫ギャラリー 代表 小山登美夫氏

会場が拡大されたことで通路が広くなり、とても見やすい環境になりました。

今後は「見に来る」だけでなく、「購入に来る」お客様がより増えると良いと思います。

アートフェア東京がインターナショナルになっていったことは良いことだと思いますが、今後は、日本のアートマーケットを牽引すべく、ドイツ銀行や日経新聞などの協賛・協力企業が「資産としての美術品」という見方を「生活の中の美術」という見方とならべて、より深く紹介していってほしいと思います。

■ユーレンス現代美術センター 館長 フィリップ・ティナリ氏

アートフェア東京2012 は、来場者にさまざまな世代や作風の日本の作家の素晴らしい作品との出会いの場を提供しました。

国内外の古美術・工芸品から日本画・洋画、そして現代美術まで、時代とジャンルを超えた作品が一堂に会するアートフェア東京は、アジアの中でもユニークなフェアであり、また、単なる商業的なイベントではなく、来場者と東京のギャラリーや美術館をつなぐ国際的で重要なプラットフォームとして機能していたことは間違いないと思っています。

日本のアートシーンが更に国際的に発展していくために、今回のアートフェア東京2012 はたいへんよい機会になったと思っております。

■アーティスト/コレクター(香港) ティム・リー氏

アートフェア東京2012 は、古美術から現代美術まで幅広い日本の美術を同時に楽しむことの出来るなかなかない良い機会でした。

今年は会場規模が拡大されたことで、印象的なインスタレーション作品やパフォーマンスなども会場内で見ることが出来ました。

また、東京アートウィーク期間中ということもあり、周辺地域で行われている他のアートイベントも同時に楽しみ、記憶に残る素晴らしい東京滞在となりました。

■周末画報 シニア・エディター フー・ジンニマ氏

アートフェア東京2012は、「アジアにおける東京」というビジョンの通り、アジアの美術の出会いの場を提供しました。

非常に良いバランスで伝統的な美術から現代美術までが一堂に会しており、今後も更にこのスタイルで成長していって欲しいと思っています。

また、「PROJECTS」や「project in PROJECTS」セクションなどを通して、若手のアーティストの作品を展示するアイディアも素晴らしかったです。

今後は、更に多くのアジアの都市からのギャラリーの出展を期待しています。

■ARTINFO CHINA 編集長 マデレーン・オディア氏

アートフェア東京では、幅広い日本のアートシーンをバランス良く紹介しており、伝統美術から現代美術までを同時に楽しめるのがとても面白かったです。

また、日本のコレクターやアートファンの間でのフェアの認知度は目を見張るものであり、またいくつかの日本のギャラリーのセールスはとても好調だったことを耳にしました。

今回、台北やソウルなどから素晴らしいギャラリーが出展していたと思います。

今後は、アジアのアートシーンの中でとても重要な国といえる中国からのギャラリーの更なる出展を期待したいです。

また、アジアのマーケットにも重点を置くヨーロッパやアメリカのギャラリーの出展を増やし更に国際性を向上していってほしいです。

アートフェア東京への出展で良い成果を出して頂くため、海外からのギャラリーが効果的に日本のマーケットにアプローチ出来る様サポートしていってほしいと思います。

<アートフェア東京2012 開催概要>

●会期:2012年3月30日(金)~4月1日(日) ※プレビューは3月29日(木)
●会場:東京国際フォーラム
●入場者数:53,000人超(前年比23%増)
●出展/協力ギャラリー数:164軒(出展企業・団体含む)
●プレス入場者数:420人(前年比15%増)

アートフェア東京2012 オフィシャルサイト


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